ジャパンC
レース回顧
カランダガンは道中11番手を進み、直線で外からメンバー最速の33.2秒で差し切ってレースを制した。勝ちタイム2分20秒3は18年にアーモンドアイが記録したレコードを0.3秒上回る世界レコード。セイウンハーデスが大逃げして前半5F57.4秒のハイペース。後半5F59.1秒、上がり34.6秒、ラップは11.8−11.5−11.3秒で尻上がり。2番手は10馬身程度離れており、実質は平均ペース。最終週で馬場は荒れていたが、踏み固められた硬い馬場で時計、上がりが出やすい状態だった。2番手以降もある程度流れたのにも関わらず上がりが速く、尻上がりラップになったようにレースレベルが高い。今年日本で行われたレースで最高レベルのレースになった。
カランダガンは1コーナー手前で少しごちゃついたが、その後はマスカレードボールの直後を進み、直線で大外から強烈な末脚でマスカレードボールとの叩き合いを頭差で制した。道中マスカレードボールが外からダノンデザイルをマークし、3コーナー手前からはカランダカンが外からマークし、勝負どころで内に押し込んでいた。それによってダノンデザイルは直線で前が詰まり加減で外に出しながら追わざるをえなかった。予想コメントに書いたように450キロ台の小柄な馬でも勝負根性があり、スジ力が強く、末脚にかなりの威力がある。相馬眼的に日本の馬場に対応できるという見立ては合っていた。
ジャパンCは東京芝2400mのG1で連対がある馬が活躍する傾向があるが、今年は連対馬が2番枠(内が荒れた馬場)、14〜18番枠(外枠不利)に配置。カランダガンは8番枠。JRAは唯一参戦してくれた欧州年度代表馬のカランダガンに忖度したのではないか。枠順を見た瞬間にピンときた。カランダガンはG1を3連勝したが、セン馬のため凱旋門賞に出走できず早い時期からジャパンCに照準を合わせ、休み明けを叩いて臨んできた。日本での調教は軽かったが、日本の馬場に合う軽い走りをしていた。歴史にも記憶にも残るインパクトのあるレース。カランダガンがレコードで勝ったことで来年は外国馬の参戦が増えそうだ。
小柄でこれほどスジ力が強い馬は、日本ではディープインパクトは別格としてスルーセブンシーズが挙げられる。スルーセブンシーズは宝塚記念でイクイノックスにクビ差の2着に負けたが、直線でごちゃついて内に切り替えるロスがあった。スムーズならイクイノックスと際どいレースになっていた。凱旋門賞では0.4秒差の4着に負けたが、直線で外に出せず、馬群を縫うようにして追い込んできた。直線で外に出して末脚全開なら際どいレースになったのではないか。今年の日本の3歳牡馬にスジ力が強い馬が2頭いる。この先の成長次第だが、世界で活躍する馬になるのか注目していきたい。
マスカレードボールは道中10番手の外を進み、メンバー2位タイの33.4秒で上がって頭差の2着。直線でカランダガンと併せ馬で伸びてきたが、最後に少しだけ競り負けた。4コーナーから直線で少し内にモタれてギアチャンジが遅れてモタつき、態勢が整って加速するまでに時間が掛かったのが勿体なかった。超スローペースの天皇賞(秋)を勝って1番人気に支持されたが、今度はハイペースでレコード決着になったレースでパフォーマンスを引き上げ、能力が日本トップレベルであることを示した。心肺機能が高くタフなレースにも強いタイプ。3歳馬でまだ馬体が能力に追いついていない。来年の活躍が楽しみだ。
ダノンデサイルは道中8番手を進み、メンバー5位の33.8秒で上がって0.5秒差の3着。道中マスカレードボールに外からマークされ、3コーナー手前からはカランダカンに外からマークされ、勝負どころで内に押し込まれたことで直線で前が詰まり加減で外に出しながら伸びてきた。パドックでは少しイレ込んでおり、馬体のバランスがいいときとは少し違っていた。最終調教では動いていたが、英国遠征明けで本調子手前だったか。それでも厳しい位置から伸びてクロワディノールを交わしたように能力を示した。高速馬場で走ったことがどう出るかだが、状態面が整えば有馬記念に使ってくるか。
クロワデュノールは1枠2番から4番手につけ、メンバー6位タイの34.4秒で上がって0.6秒差の4着。好スタートからサッと好位につけ、直線で一旦先頭に立ったが、外から伸びた馬に切れ負けした。皐月賞はクビ差、ダービーは3/4馬身差でマスカレードボールに先着したが、マスカレードボールは皐月賞では1コーナー手前でごちゃついて後方に下がる不利があり、ダービーでは不利な8枠17番だった。元々差はなかったのではないか。欧州遠征明けの影響か、パドックでは馬体のバランスが整っていなかった。マスカレードボールに離されたのは、そのあたりもあるのだろう。
ジャスティンパレスは1枠1番から後方を進み、メンバー4位の33.5秒で上がって0.6秒差の5着。4着クロワディノールとはクビ差。1コーナーで少しごちゃついて後ろに下がり位置取りが悪くなったことが堪えた。Cデムーロ騎手が2コーナーで外に出してマスカレードボール、カランダガンを見ながら進めたが、勝負どころで反応が悪く、直線でもエンジンの掛かりが遅く、そこで連対した2頭に離された。昨年天皇賞(秋)からG1を8戦して4、5、5、6、6、3、3、5着。勝ち切れないが、ディープインパクト産駒の6歳馬が安定して走っている。次走有馬記念がラストランになる。
ブレイディヴェーグは出遅れて最後方を進み、メンバー2位タイの33.4秒で追い込んで0.7秒差の6着。2着マスカレードボールと同じ上がりを繰り出したが、最後方から追い込むレースでは厳しかった。直線でジャスティンパレスと併せ馬で伸びてきたが、最後に競り負けたのは、流れただけに距離適性の差が出たか。昨年府中牝馬Sを勝ってから勝てなかったが、社台の使い分け、レース選択もあるのだろう。まだ能力は衰えていないが、元々使い込めないタイプ。今後は繁殖入りする予定。
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