秋華賞
レース回顧

エンブロイダリーは6枠11番から6番手の外につけ、向こう正面で2番手に押し上げるとメンバー6位の35.2秒で抜け出してレースを制した。勝ちタイムは1分58秒3。エリカエクスプレスが逃げて前半3F35.6秒、5F59.4秒。後半5F58.9秒、上がり35.3秒、ラップは11.7−11.6−12.0秒。高速馬場で武豊騎手が逃げて前半4F12.5−11.1−12.0−12.1秒の緩い流れに持ち込んで前に行った2頭で決着。勝ったエンブロイダリーは2月のクイーンCを1分32秒2で勝ち、2着エリカエクスプレスは1月のフェアリーSを1分32秒8で勝っていた。早い時期にマイルの高速決着で頭角を現し、桜花賞、オークスで人気になった2頭での決着になった。前半の流れが緩んだことでマイル適性も問われたか。

エンブロイダリーは向こう正面で前残りになるとみたルメール騎手が2番手に押し上げ、直線で逃げたエリカエクスプレスを交わして優勝。前走オークスは9着に終わったが、桜花賞馬が牝馬2冠を達成した。距離2000mに不安はあったが、ルメール騎手が強気に向こう正面で2番手に押し上げたことが大きかった。アドマイヤマーズ産駒だが、母系はビワハイジの一族で近親にブエナビスタ。距離は2000mくらいまでは守備範囲なのだろう。パドックでは春より背が伸びて少しパワーアップしていた。これまで間隔を空けて使ってきた馬でエリザベス女王杯は中3週になる。マイルも走れるが、マイルCSは牡馬で相手が強力。陣営がどう判断するか。

エリカエクスプレスは前半5F59.4秒で逃げ、メンバー8位タイの35.4秒で上がって半馬身差の2着。4コーナーから直線で後続を引き離したが、最後は2番手に押し上げていたエンブロイダリーに交わされた。武豊騎手は5F目から5F連続で11秒台のラップで後続を脚を使わせるレースをしている。父エピファネイア、母の父ガリレオで全妹のミッキーマーメイドは芝2000mの未勝利戦1着。ピッチ走法で距離不安はあったが、武豊騎手が上手く乗っている。天皇賞(春)の鮫島駿騎手の件以降、武豊騎手に絡むとTVで武豊騎手にため息をつかれ、それが業界に伝番し干される可能性があるため、武豊騎手へのマークが緩んでいる。宝塚記念1着のメイショウタバル、スプリンターズS2着のジューンブレアは逃げ。前残り決着になるのがパターン。

パラディレーヌは大外枠から16番手を進み、勝負どころで10番手に押し上げ、メンバー最速の34.4秒で上がって0.2秒差の3着。2着エリカエクスプレスとは0.1秒差。後方から大外をブン回し、勝ったエンブロイダリーの上がりを0.8秒上回っている。大外枠スタートから外に寄れて位置取りが悪くなったことが堪えた。早めに動いて前にプレッシャーをかけそうだった1番人気のカムニャックが直線ですぐに一杯になったこともマイナスだった。競馬にタラレバは禁物と言われるが、中団あたりにつければ勝ち負けできたのではないか。丹内騎手がG1初制覇のチャンスを逃した。外を回っていい脚を長く使っており、距離をこなすタイプ。中3週になるが、賞金が足りればエリザベス女王杯に使ってくるか。

ジョスランは2枠3番から内ラチ沿いの6番手を進み、向こう正面で外から上がられて4コーナーで13番手になり、メンバー3位タイの34.7秒で上がって0.5秒差の4着。直線では前が壁になって外に持ち出してスペースを探しながら伸びてきた。18頭の多頭数で内枠から内ラチ沿いをロスなく回ったことが結果的にマイナスだった。テン乗りの岩田望騎手で乗り難しかった面もあるのだろう。まだ馬体のバランスは整っていないが、エフフォーリアの全妹で素質はある。

セナスタイルは7枠13番から最初の直線で内に入れ、道中内ラチ沿いの15番手を進み、メンバー2位の34.6秒で上がって0.5秒差の5着。3、4コーナーで内が空かないとみた岩田康騎手が大きく外に持ち出すロスがあった。直線でも前が壁になって馬が突っ込むか躊躇しながら走ってトップギアに入らずに脚を余した。あれだけロスがありながら2位の34.6秒で上がって0.5秒差の5着に入ったことを評価したい。父ソットサス、母ヌーヴォレコルト。馬体が成長して本格化すれば、来秋はエリザベス女王杯で勝ち負けできそうだ。

マピュースは5枠9番から11番手の外を進み、メンバー7位の35.3秒で上がって0.9秒差の10着。前走中京記念を2番手から抜け出して1分32秒3で勝ったが、今回は横山武騎手が前に行く気がなく、さらに3、4コーナーで内に入れたことで直線で前が壁になってほとんどまともに追えなかった。デビューから全て芝1600mを使われているため、距離2000mは長いということが頭にあったのか無気力な騎乗に映った。相馬眼的に芝2000mでもこんな負け方をする馬ではない。今年のG1で横山武騎手は[0−0−1−9]。

カムニャックは8枠17番から3番手の外につけ、4コーナーで川田騎手の手が激しく動き、直線で一杯になって1.9秒差の16着。オークス馬が単勝2.1倍の1番人気に支持されたが、全く見せ場がなく惨敗した。レース前からテンションが上がり、スタンド前発走の大歓声でさらにテンションが上がっていた。ゲートでも暴れており出遅れてもおかしくなかったが、川田騎手が何とか出して先行したが直線で全く伸びなかった。テンションが高かったこと、外を回って5F目から11秒台のラップが5F続く流れが影響したのではないか。

17年の宝塚記念(阪神芝内2200m)では天皇賞(春)を勝って単勝1.4倍のキタサンブラック(武豊騎手)が3番手の外から直線で全く伸びずに1.3秒差の9着(11頭立て)に終わっている。そのときは6F目から5F連続で11秒台のラップが続いた。内回りの中距離で外を回って先行し、11秒台のラップが5F続くと厳しくなるのではないか。武豊騎手はそれを知っていて、カムニャックは17番枠で外を回るため、前半の流れを緩めて11秒台のラップが5F続くレースにしたのではないか。カムニャックはパドックで馬体の造りが目立っていた。音に敏感な面は友道調教師が対策してくる。母がダンスアミーガで夏馬タイプといった感もあるが、オークス馬として早期の復活を期待したい。

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