天皇賞(秋)
レース回顧

パンサラッサが大逃げして前半5F57.4秒のハイペース。後半5F60.1秒、上がりは36.7秒、ラップは11.6−12.4−12.7秒。2番手以下はかなり離れており、実質は上がり勝負で15頭のうち12頭が33.7秒以下、勝ったイクイノックス、3着ダノンベルーガが32秒台で上がっている。2番手につけた横山典騎手のバビットが追いかけなかったことで社台のイクイノックスが得意な上がり勝負になった。昨年の天皇賞(秋)は上がり勝負が得意なエフフォーリアが優勝。横山典騎手はカイザーミノルで前半5F60.5秒のスローで逃げている。目立たないが、横山典騎手が社台に忖度している点を考慮しておきたい。近いうちに社台からご褒美で重賞を勝てる馬が回ってくるのではないか。天皇賞(秋)は社台が種牡馬価値を高めるレース。

イクイノックスは4枠6番スタートから10番手につけ、大外からメンバー最速の32.7秒で差し切ってレースを制した。勝ちタイムは1分57秒5。1馬身差の2着パンサラッサの上がりは最下位の36.8秒でイクイノックスとは4.1秒差。逃げたパンサラッサと2番手以下は全く違う流れになり、ゴール寸前でそれらが交わるレースになった。イクイノックスは中団の外を進んで直線で大外に出し、強烈な末脚で差し切ってG1初制覇を飾った。皐月賞、ダービーは大外18番枠でジオグリフ、ドウデュースに負けたが、得意の東京コースで中団からスムーズなレースをして大きくパフォーマンスを引き上げた。

東スポ杯2歳Sをメンバー最速の32.9秒で差し切って圧勝したが、後半5Fは57.6秒、ラップは11.7−11.6−11.0−11.9−11.4秒でラスト1Fが尻上がり。この持続力と最後にひと伸びする末脚の威力が天皇賞(秋)にマッチしていた。体質が弱いため軽い調教しかできないが、相馬眼的にこのレベルの馬になると普通に仕上がれば力を出せる。これから馬体が成長して本格化すれば、スーパーホースになる。東京コースが合うため、次走はジャパンCでドウデュースと再戦することになりそうだ。今年の平地G1は1番人気の連敗が続いていたが、イクイノックスが勝って15連敗でストップさせた。

パンサラッサは前半5F57.4秒のハイペースで大逃げし、メンバー最下位の36.8秒で上がって1馬身差の2着。他の14頭とは全く違うタイムトライアルに近いレースをして1分57秒6で走って2着に粘り込んだ。昨年秋以降、芝1800〜2000mで逃げたときは[4−2−0−0]、前半5F57秒台で逃げたときは[2−1−0−0]で福島記念、中山記念を勝っている。ドバイターフ(G1、芝1800m)で逃げて1着同着に持ち込んだのがダテではない。矢作厩舎の管理馬は鍛えられており心肺機能が高い。2着に粘れたのは2番手のバビットが追いかけなかったこと、ダノンベルーガが荒れた内を突いたことがプラスに働いている。次走は香港カップに向かう予定。

ダノンベルーガは3枠5番手から11番手を進み、直線で内に切れ込んで最内からメンバー2位の32.8秒で上がって0.2秒差の3着。2着パンサラッサとはクビ差。皐月賞、ダービーで福永騎手のジオグリフにマークされて外に出せずに荒れた内を突いて4着に負けたため、今回はジオグリフの後ろを進み、道中はイクイノックスの直後にいたが、勝負どころで外からユーバーレーベンに来られて外に出すスペースがなくなり、川田騎手が最内に突っ込んでそこから伸びてきた。荒れた内を突いてイクイノックスとは上がり0.1秒差。直線で少し待って外に出していればイクイノックスと際どいレースができたのではないか。

皐月賞では内が荒れた馬場で1枠1番からずっと荒れた内を通り、ダービーではジオグリフにマークされて馬群を割って内を突くレースになった。今回は人気馬5頭の中では最も内の3枠5番に入れられ、直線で外に出せず、荒れた内を突いている。最速上がりで勝った新馬戦、共同通信杯は外から最速の33.1秒、33.7秒で差し切っている。G1で4、4、3着に負けたが、まともに走っていない。川田騎手は直線ですぐにガツンと追って一気にギアチャンジしているが、直線で外に出して徐々にギアチェンジするレースをした方がスピードの持続力を生かせるのではないか。走法を嫌っているのだろうが、社台がダノンベルーガの種牡馬価値を認めてJRA&社台のガードが外れれば、すぐにG1を勝てるのではないか。

ジャックドールはスタートを決めて4番手を進み、メンバー8位タイの33.5秒で上がって0.3秒差の4着。直線で2番手に上がったが、パンサラッサを捕まえられず、上がり勝負でイクイノックス、ダノンベルーガに切れ負けした。白富士Sを1分57秒4、金鯱賞を1分57秒2のレコードで圧勝している馬。1分57秒台前半で走れるペースで進めて自分のレースができていれば、もっと走れたのではないか。札幌記念でパンサラッサに勝った馬。自分のレースに徹したパンサラッサが2着に粘り、2番手以下の流れに従って消極的なレースをしたジャックドールは4着。藤岡佑騎手は一世一代の勝負の騎乗をしたのだろうか。

シャフリヤールは6番手からメンバー10位タイの33.6秒で上がって0.6秒差の5着。昨年のダービーを2分22秒5で勝ち、今年はドバイSCを勝った実力馬だが、休み明けより叩き2戦目、58キロより57キロが理想で最大目標は昨年3着に善戦したジャパンCなのだろう。パドックでは馬体が少しフックラと映り、余裕残しの仕上げだった。小柄な馬が58キロを背負って32秒台の上がりが求められるレースでは厳しかった。藤原英厩舎のディープインパクト産駒。次走のジャパンCは本番の仕上げで臨んでくる。

マリアエレーナは1枠1番から内ラチ沿いの4番手につけ、メンバー10位タイの33.6秒で上がって0.7秒差の7着。ノースブリッジ(岩田康騎手)が2コーナー出口の内ラチがない部分で内に寄れたため、マリアエレーナは内ラチに接触しそうになって後退する大きな不利があった。岩田康騎手は2日間騎乗停止処分。マリアエレーナは最後までしぶとく伸びており、不利がなければ1分57秒台で走れたのではないか。小柄な牝馬だ小倉記念を圧勝したのはダテではなく、心身ともに成長し本格化している。

ジオグリフは6番手の馬込みを進み、メンバー10位タイの33.6秒で上がって0.8秒差の9着。馬込みで緩い流れになったことで道中頭を上げるなど折り合いを欠きながら走っていたことが影響している。イクイノックス、ダノンベルーガを前受けして33秒台で上がって完封するレースが理想だったが、スムーズさを欠いてまともに走らなかった。今回はパンサラッサを除くと実質は上がり勝負。ジオグリフはもっと速い流れで上がりが掛かるレースが合っている。馬体はボリュームアップしていた。

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