安田記念
レース回顧

ソングラインは7枠13番スタートから10番手につけ、メンバー4位タイの32.9秒で差し切ってレースを制した。勝ちタイムは1分32秒3。ホウオウアマゾンが逃げて前半3F34.7秒、5F58.7秒の緩い流れ。中盤に12.0−12.0秒と緩んで上がりは33.6秒、ラップは11.2−11.0−11.4秒。8Rの1勝Cは前半3F34.7秒、5F57.9秒で勝ちタイムは1分32秒8。安田記念は1勝Cより前半5Fが0.8秒遅くなってラスト3Fの上がり勝負になり、馬場のいい外を通った差し馬が有利になった。

ソングラインは昨年のNHKマイルCで最後にフワッとしてシュネルマイスターにハナ差で負けたが、今回は最後までしっかり伸びてリベンジした。池添騎手はグランアレグリアで断然人気のアーモンドアイに勝ったように安田記念の勝ち方を熟知している。直線でごちゃついた馬が多く、外めの枠からスムーズに進められたことも大きかった。雄大な馬体が目立ち、4歳になって充実してきている。土曜の鳴尾記念に続き、サンデーRのワンツー決着になった。サウジのターフスプリントを勝ったように海外遠征で結果を出している馬。秋はシュネルマイスターとの使い分けを含め、海外のレースを選択するかもしれない。

シュネルマイスターは5枠9番スタートから13番手を進み、メンバー4位タイの32.9秒で狭い馬群を捌いて突っ込んでクビ差の2着。道中外からセリフォス(藤岡佑騎手)にマークされて外に出せず、ルメール騎手が直線で狭いところを捌いて突っ込んできた。勝ったソングラインとはスムーズに進めたかどうかの差。前走ドバイターフは直線で伸び切れなかったが、今回は最後にシュネルマイスターらしい伸び脚を見せた。社台もルメール騎手もひと安心したのではないか。490キロで少し腹目が太く映ったことが嫌われたのか、最後にイルーシヴパンサーが1番人気になり、シュネルマイスターは2番人気だった。

今年の重賞でルメール騎手は[1−9−0−15]、ノーザンF生産馬では[0−8−0−9]で3番人気以内では[0−8−0−6]。昨年は安田記念までノーザンF生産馬は重賞で32勝していたが、今年は20勝しかしていない。昨年は安田記念まで川田騎手11勝、ルメール騎手7勝だったが、今年は川田騎手5勝、ルメール騎手1勝。クラブ募集の高額馬の不振の影響がモロに出ている。シュネルマイスターは夏は休養して秋は昨年と同様に毎日王冠、マイルCSになりそうだ。

サリオスは8枠17番手から7番手につけ、メンバー6位の33.0秒で上がってクビ+頭差の3着。前走高松宮記念は初の芝1200m、重馬場で15着に終わったが、得意の東京コース、マイル戦、レーン騎手で巻き返した。ずっと太めで走っていた馬が22キロ絞れて過去最低体重。これまでより腹目がスッキリしていた。先週のダービーでは調教で速いタイムを出して攻めたダノンベルーガが4着に終わったが、サリオスは中間は全て馬なりで遅いタイムで走っておりソフト仕上げだった。堀調教師は暑さに弱いため馬体が大きく減ったとコメントしているが、馬体を絞る何かしらの対策をしたのではないか。半姉サラキアは5歳の夏になってから本格化し、府中牝馬S1着、エリザベス女王杯2着、有馬記念2着とパフォーマンスを引き上げた。サリオスは成長力あるハーツクライ産駒。陣営が距離適性を誤らなければ、どこかのG1で復活Vがあるのではないか。

セリフォスは10番手からメンバー3位の32.8秒で上がって0.1秒差の4着。前走NHKマイルCで最内を突いて4着に終わった馬が、今度は大外をブン回して4着に入った。大外から鋭く伸びてきたが、ラスト100mで前と同じ脚色になった。それでもソングライン、シュネルマイスターの上がりを0.1秒上回っている。初の古馬相手のG1で0.1秒差の4着に入ったことを評価したい。今年の3歳牡馬はレベルが高いのではないか。デイリー杯2歳S組は3着カワキタレブリーがNHKマイルC3着、プルパレイがファルコンS1着、スタニングローズがオークス2着とその後活躍が目立つ。今年の芝重賞で藤岡佑騎手は[2−0−1−19]、逃げ馬は[2−0−1−3]で5番人気以内なら[2−0−1−2]。逃げなかったときは[0−0−0−14]。人気馬で逃げたときしか馬券圏内がない。騎手も予想の大きなファクターになる。

ファインルージュは好位からメンバー9位タイの33.5秒で上がって0.2秒差の5着。心肺機能が高くタフなレースに強いタイプだが、上がり勝負になって切れ負けした。武豊騎手が直線で外に出せず、荒れた内を突いたことも堪えている。もっと速い流れになれば、勝ったソングラインと差はない。12年以降の東京芝1600mのG1で武豊騎手は[0−1−0−27]で唯一連対したのは18年ヴィクトリアマイルのリスグラシュー(1人気)。5番人気以内では[0−1−0−9]、安田記念では[0−0−0−10]。こういうデータを知っているかどうかで予想には大きな差が出る。

イルーシヴパンサーは後方2番手からメンバー最速タイの32.6秒で追い込んで0.2秒差の8着。直線で前が壁になってスムーズさを欠き、まともに追えなかった。今回の勝ちタイムと同じ1分32秒3で東京新聞杯を楽勝した馬。調教の動きが絶好で仕上がりは良かったが、やはりG1で田辺騎手が差し追い込み馬に騎乗すると良くないのだろう。昨年以降の芝重賞で田辺騎手は[6−5−2−55]だが、3番人気以内では[1−0−0−11]。2番人気以内は[0−0−0−6]。芝G1は[1−3−7−105]で5番人気以内では[0−0−2−12]。連対した4頭のうち3頭が逃げ馬、1頭が先行馬だった。差し追い込み馬では連対がなく3着が3回あるのみ。これを知っている人は割り引けたのではないか。安田記念は7、8着あたりに負けた馬が翌年激走する傾向がある。イルーシヴパンサーはキャリアを積んで地力が強化されれば、来年の安田記念を狙えそうだ。今年の平地G1で1番人気は[0−1−1−9]で未勝利が続いている。

ソウルラッシュは13番手を進んだが、直線で前が壁になって追えず、最後は内を突いて斜行しヴァンドギャルドの進路を妨害して13着。緩い流れで直線で団子状態になり、直線で全くスペースがなかった。直線で浜中騎手が道中掛かって直線で下がってきたダイアトニックの後ろにつけたことも影響している。稍重で3連勝したが、5走前の中京芝1600m(良)をほぼ馬なりで34.0秒で上がって楽勝している。道悪巧者と思われているが、良馬場でガツンと切れるタイプの可能性がある。池江厩舎の管理馬でここにきて心肺機能が強化されてきた印象がいる。こういうタイプはG1で激走があるので注意したい。

ヴァンドギャルドは内ラチ沿いの7番手につけたが、直線で伸び切れず15着。道中の手応えは良かったが、流れが緩んで上がり勝負に傾き過ぎたことが堪えた。上がり勝負で道中荒れた内と通ったことも堪えている。前走ドバイターフで直線で馬群を捌いて鋭く伸びてロードノース、パンサラッサの1着同着にハナ差の3着に入った馬。今回は荒れた内を通り上がりが速過ぎて惨敗したが、6歳になってかなり地力が強化されている。まだ重賞は富士Sの1勝しかしていないが、少し上がりの掛かる馬場で強烈なパフォーマンスを発揮する可能性があるので注意したい。

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