日本ダービー
レース回顧

マカヒキはスタートを決めて内ラチ沿いの8番手につけ、直線で狭いスペースを割ってメンバー2位タイの33.3秒で上がり、最後はサトノダイヤモンドとの叩き合いをハナ差(8cm差)で制した。勝ちタイムは2分24秒0。マイネルハニーが逃げて前半5F60.0秒の平均ペース。中盤に12.9−13.1秒と緩んだことでラスト5F58.0秒、ラスト3F34.2秒(11.6−11.0−11.6秒)と上がりの速いレースになった。マカヒキは皐月賞では後方に下げて追い込んで届かず2着に終わったが、今回は中団で流れに乗り、ラスト3Fを高速ラップでまとめて差し切った。予想に「精神的に強い馬で本来は馬込みを苦にしないレース巧者。陣営がマカヒキの精神力と能力を信じて中団の馬込みで進められるかどうかが最大のポイント」と書いたが、その通りのレースぶりでダービー馬になった。直線で狭くなりラスト1Fはずっと逆手前で走っていた。それでも競り勝つところが底力。スムーズならもっと楽に勝っていたのではないか。道中流れが緩んだことで勝ちタイムは速くはないが、上がりをまとめておりレースレベルは高い。パドックでは前走より馬体に芯が入ったことで踏み込みがしっかりし、気合乗りが良く落ち着きもあった。ブエナビスタも精神面が強い馬だったが、マカヒキも何事にも動じない精神面の強さがある。こういう馬は海外遠征しても力を発揮できる。高速ラップの持続力が優れたディープインパクト産駒で相馬眼的に世界レベルのスーパーホースになる可能性を持った馬。日本馬初の凱旋門賞制覇を期待したい。それができる馬。

サトノダイヤモンドは7番手からメンバー4位の33.4秒で抜け出したが、最後にマカヒキとの叩き合いに負けてハナ差の2着。直線でマカヒキを外からブロックして先に抜け出すレースができたが、最後に内からマカヒキに少しだけ前に出られた。レース後に陣営から向こう正面あたりで左後肢の落鉄があったと発表された。それを除くとほぼ完璧なレースができている。マカヒキに切れ負けしたが、上がりを33.4秒でまとめたことを評価したい。高速馬場、高速上がりにも対応できることを示した。4強の中では最も前につけるとみていたため、流れが速くなってタフな流れになったときにどうかとみていたが、中盤に流れが緩んで上がりのレースになったことも良かったのだろう。パドックでは前走より馬体が4キロ減って本番の仕上げが施されていた。芝2000mもこなせるが、距離は長い方が合っている。秋は菊花賞、天皇賞(秋)、凱旋門賞のどれになるかは現時点では未定。池江厩舎の管理馬は急激にパフォーマンスがアップした後に反動が出て尻つぼみになる馬が多い。サトノダイヤモンドは大事に使われており、現時点ではその不安はない。

ディーマジェスティは中団からメンバー2位タイの33.3秒で伸びて0.1秒差の3着。道中サトノダイヤモンドとマカヒキを見ながら進め、直線で外から伸びてきたが、直線でサトノダイヤモンドに寄られて外に持ち出すロスがあった。そこがスムーズならもっと際どいレースになっていた。皐月賞は前半5F58.4秒、後半5F59.5秒の消耗戦だったが、今回は前半5F60.0秒、後半5F58.0秒で後半の方が速い。心肺機能が高い馬で消耗戦になった方が持ち味を生かせるタイプ。これだけ上がりの速いレースで3着に入ったように絶対能力が高いのだろう。馬体の造りは中距離向きだが、この走りなら距離は問題ない。陣営は凱旋門賞を視野に入れていたが、秋は菊花賞を目指すことになった。キャリアを積んで地力強化し、来年凱旋門賞に挑戦することになりそうだ。蛯名騎手はダービーで悔しい思いを何度も経験し、ダービーを勝つための下地は整っている。あとは自分で運を引き寄せるだけだ。その日を楽しみに待ちたい。

エアスピネルは5番手から直線で早めに抜け出したが、最後に力尽きて0.4秒差の4着。前に行った馬の中では最先着。武豊騎手が上手く乗ったが、上位3頭が強過ぎた。距離適性の差もあるのだろう。馬体は距離をこなす方に成長してきているが、ベストは1800m前後か。デビューから4強以外には負けておらず、例年ならG1を勝っていてもおかしくないレベル。武豊騎手は「生まれた時代が悪かったというしかない」とコメント。

リオンディーズは後方から馬群を捌いてメンバー最速の33.2秒で上がって0.5秒差の5着。最初の直線で頭を上げて折り合いを欠いていた。弥生賞、皐月賞で前に行った影響もあるが、半兄エピファネイアも掛かる馬だった。血統的な面もあるのだろう。切れる脚を使ったが、7、8番手につけた馬に33秒台前半で上がられては厳しかった。今後も折り合いが課題になるが、角居調教師がどう克服させるか注目していきたい。

レッドエルディストは出遅れて後方からメンバー7位タイの33.7秒で大外から追い込んで0.8秒差の9着。四位騎手が大外をブン回したが、これだけ上がりが速くなっては厳しかった。スタミナがあり、消耗戦に強いタイプ。ひと夏越して馬体が成長すれば、相馬眼的に菊花賞を狙えそうな馬。菊花賞がタフなレースになるとディーマジェスティとワンツーを決めるのではないか。これから馬体がどこまで成長してくるか注目したい。

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