皐月賞
レース回顧

ディーマジェスティは後方を進み、勝負どころで外から上がって先団を射程圏に入れるとメンバー2位の34.0秒で外から豪快に差し切ってレースを制した。勝ちタイム1分57秒9はレースレコード。リスペクトアースが逃げて前半5F58.4秒のハイペース。リオンディーズが途中からハナを切って飛ばしたことで差し馬に有利な展開になった。南南西の強風(風速10m)が吹いており、向こう正面は向かい風、最後の直線は追い風。ディーマジェスティは向こう正面で風の影響を少なくするために馬の後ろに入れて脚をタメ、直線で追い風を受けながら外からガツンと伸びて差し切った。直線で一瞬他馬が止まって見えたのは、サトノダイモンドとエアスピネルが不利を受けて立て直したこと、ディーマジェスティが追い風に乗ったこともあるのだろう。ハイペースの展開が嵌ったのは確かだが、能力がないとあの脚は使えない。中山を知り尽くした蛯名騎手の熟練の技も光った。馬体はまだ幼い部分があり、3強と比べると見劣るが、二ノ宮厩舎の管理馬は馬体が地味でもナカヤマフェスタ(宝塚記念1着、凱旋門賞2着)のように時々強烈なパフォーマンスを発揮することがある。前走共同通信杯も勝負どころでズブく蛯名騎手の手が動いたが、今回も勝負どころで手が動いていた。それで直線でガツンと伸びるのだから心肺機能が相当に高いのだろう。他馬が苦しくなったところでひと伸びできる心肺機能の高さは今後も大きな武器になる。過去5年の皐月賞で共同通信杯組が4勝。レース間隔を空けられる共同通信杯は今後益々重要度が増してくることになりそうだ。次走はダービーで2冠を目指す。秋は凱旋門賞に挑戦するプランがある模様。蛯名騎手と二ノ宮厩舎のコンビは凱旋門賞でエルコンドルパサーとナカヤマフェスタで2着がある。3度目の正直になるか楽しみだ。

マカヒキは後方2番手から大外を回ってメンバー最速の33.9秒で追い込んで0.2秒差の2着。後方から大外を回っていい脚を長く使い、最後にガツンと伸びてきたが、それでも届かなかった。川田騎手は予定通り後方から進めたとコメントしている。当面の敵とみられたサトノダイヤモンド、リオンディーズを交わしており、ハイペースで後方に控えたことは悪くはないが、それで勝てるほどG1は甘くない。陣営がマカヒキの精神力と能力を信じて中団の馬込みで進められるかどうかがポイントになるとみていたが、陣営はレース前から後方から大外を回って追い込むレースを選択していたようだ。個人的にはマカヒキは精神的に強い馬で本来は馬込みを苦にしないレース巧者とみている。リオンディーズのMデムーロ騎手、サトノダイヤモンドのルメール騎手が前につけて早めに動いたのは、マカヒキの末脚の威力が世界レベルということを知っているからなのではないか。ディーマジェスティの上がりを0.1秒上回ったが、ダービーで同じように大外をブン回すとまた追い込んで届かない可能性がある。マカヒキは相馬眼的にG1を勝てる馬。今後の成長次第でドゥラメンテを超える世界レベルのスーパーホースになる可能性がある。皐月賞で欠けていたものを補えれば結果は出るのではないか。

サトノダイヤモンドは中団からメンバー3位の34.8秒で伸びて0.4秒差の3着。直線でリオンディーズが斜行した煽りを受けて外に振られ、立て直すロスがあった。最もスピードに乗ったときの不利だけに痛かった。きさらぎ賞で時計の速い馬場に対応できたが、新馬、未勝利戦が渋った馬場だったように本来はもう少し時計の掛かる馬場の方が合うタイプ。良発表でも直前の雨で馬場が緩んでいたが、レースレコードが出る高速決着になるとは陣営も誤算だったのではないか。きさらぎ賞から直行したように最初からダービー制覇が最大目標。最終調教でも少し余裕を残しており、中山に輸送して馬体は6キロ増。最後にピリッとしなかったのは、不利もあったが、そのあたりの影響もあるのだろう。調教時点では雄大な馬体が目立ったが、パドックではきさらぎ賞のときより踏み込みが少し力強くなっていたが、馬体はまだ甘い部分があった。池江厩舎が本番の仕上げを施してそのあたりがどう変わってくるのか注目したい。

リオンディーズは外枠スタートから2番手につけ、向こう正面で行きたがるとMデムーロ騎手は押さえずに行かせてハナを切り、3、4コーナーで後続を引きつけて直線で追ったが、外から3頭に交わされて4位入線。ゴール前で斜行し5着に降着になった。皐月賞男Mデムーロ騎手らしかなぬ騎乗。向こう正面で強風を前から受けたことでペース感覚が狂ったのではないか。ハイペースで飛ばし、向こう正面で強風をモロに受けたことを考えると4位入線なら悪くない。キャリア1戦で朝日杯FSを勝った2歳王者が弥生賞で2着、皐月賞で5着に終わり、輝きを失いかけているが、これで終わるとは思わない。前に行ってタフなレースを経験したことで心肺機能がさらに強化されたのではないか。朝日杯FSの直線で逆手前に変えてガツンと伸びたが、こういう走りをする馬は左回りの東京で最大パフォーマンスを発揮する馬が多い。また折り合いを欠いたらアウトだが、折り合って差すレースができれば、巻き返す余地はある。母シーザリオはオークス馬、半兄エピファネイアはジャパンCを圧勝した馬。東京芝2400mで最大パフォーマンスを発揮する一族。ただしマカヒキの精神力と末脚の持続力&威力に屈する可能性があるため、Mデムーロ騎手の渾身の騎乗が必要になる。

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