オークス
レース回顧

ヌーヴォレコルトは中団からメンバー3位の34.2秒で抜け出し、最後はハープスターの追撃をクビ差振り切ってレースを制した。ペイシャフェリスが逃げて前半5F60.7秒の緩い流れ。09年にブエナビスタが勝ったときは、レースのラスト3Fが11.7−11.1−12.0秒でラスト1Fが12秒台に落ちたが、今回は12.0−11.3−11.8秒でラスト2Fが11秒台。12秒台ならハープスターに差されていた。ヌーヴォレコルトは直線に入ってすぐに前が壁になり、そこで脚をタメられたことが最後の伸びに繋がっている。ハープスターが後方から大外をブン回し、かつ左前脚の蹄鉄が外れかけていたことも有利に働いた。チューリップ賞、桜花賞は長距離輸送があったが、今回は輸送が短いため、中間の調教でかなり攻めていた。ハープスターにひと泡吹かせたいと厩舎一丸になって攻めの姿勢を貫いたことが実を結び、勝利の女神が微笑んだ。体型的に芝2400mはベストではないが、完成度の高さ、調子の良さ、レースが上手さが上手く絡み合っての勝利。岩田騎手は3歳クラシック完全制覇。12年のジャパンではジェンティルドンナでオルフェーヴルに勝っている。1番人気になったダービーでコチコチに緊張して惨敗したこともあったが、今は東京芝2400mで大物食いが得意な騎手に変貌している。ヌーヴォレコルトは夏は休養し、ひと叩きしてから秋華賞に向かう予定。成長力あるハーツクライ産駒。どんな姿を見せてくれるか楽しみだ。

ハープスターは後方3番手を進み、大外からメンバー最速の33.6秒で追い込んでクビ差の2着。道中外からニシノアカツキにマークされて外に出せず、直線だけのレースになったことが堪えた。タフな馬場で一頭だけ33秒台で上がったが、道中の流れが緩んで上がり勝負に傾いたこともあり届かなかった。勝負どころで押し上げて行かなかったのは、外からマークされたこともあるが、川田騎手は直線だけでも届くと自信があったのだろう。レース後に左前脚の蹄鉄が外れかけていたことが判明した。新潟2歳Sでは直線で右手前で走り、左手前に替えてからガツンと伸びて差し切ったが、今回は直線でずっと右手前で走っていた。ハープスターは左前脚の蹄鉄が外れかけていたことに違和感を感じて目一杯に走らなかったのではないか。現時点では寸詰まりの体型で距離不安は払拭できていないが、これが本当の能力だとは思わない。松田博厩舎のもう1頭サングレアルは最終調教で時計を出し過ぎて馬体が14キロ減って自滅している。松田博厩舎は牝馬の仕上げに長けた厩舎で牝馬G1で仕上げに失敗するのは稀。ハープスターの蹄鉄といい、勝利の女神から見放されていた。2着に負けたことで凱旋門賞挑戦が白紙になる可能性があったが、今後は札幌記念から凱旋門賞を目指すことが決定。凱旋門賞は斤量のアドバンテージがある3歳馬が有利。日本馬初の凱旋門賞制覇を期待したい。ハープスターの牝馬怪物伝説はまだ始まったばかりだ。

バウンスシャッセは中団から内を突いてメンバー4位の34.4秒で伸びて0.1秒差の3着。直線で前と外に馬がいて、苦し紛れに内を突いたが、馬群を捌いてしぶとく伸びてきた。勝ったヌーヴォレコルトとは0.1秒差だけに直線でスムーズなら際どいレースになっていた。G1にしては仕上がりがイマイチの馬が多い中、パドックでは馬体、気配とも目立っていた。藤沢和厩舎はオークスを勝てる手応えを掴んだのではないか。前走皐月賞は荒れた内を通って11着に終わったが、牡馬の一線級と戦った経験が糧になったのだろう。馬体の造り、血統面のバックボーンもあるが、距離延びてパフォーマンスを引き上げたように距離適性が高いのだろう。高速上がりに不安があったが、東京の馬場がタフ化して上がりが掛かったことがプラスに働いている。北村宏騎手はG1では[1−1−3−41]。中山は[0−0−0−24]だが、東京は[1−1−3−41]、牝馬なら[1−0−3−14]で複勝率22.2%。重賞以外では好騎乗を見せているため、そのうち重賞でも成績が上向いてくるのではないか。

ニシノアカツキは後方からメンバー2位の34.0秒で伸びて4着。ブービーの17番人気であやわのシーンを作った。オペラハウス産駒で少し時計の掛かる馬場を得意にしているタイプ。この馬の激走は東京の馬場がタフ化してきたことを示している。道中ハープスターを外からマークして直線でひと脚先に追い出して伸びてきたように勝浦騎手は上手く乗っている。社台の断然人気馬をマークして苦しめたことを評価したい。今後の騎手人生に関わるようなこういう騎乗はなかなかできるものではない。ただしこれが本当の競馬。断然人気馬はマークされるのが当たり前。経験則ではこういう騎乗をした騎手は近々重賞で好成績を挙げることが多い。ニシノアカツキはかなり使い込んだため、秋に成長した姿を見せられるかがカギ。武藤厩舎の技術力が問われそうだ。

サングレアルは中団につけたが、直線で伸び切れず0.9秒差の7着。一戦ごとに馬体が減っており、馬体の維持がポイントだったが、14キロ減って自滅した。中3週で再度の東京輸送があるにも関わらず、最終調教で時計を出し過ぎたことが堪えたのだろう。松田博厩舎が牝馬G1で仕上げに失敗するのは珍しい。これだけ馬体が減っても、パドックでは落ち着いて淡々と周回していた。半姉ブエナビスタもそうだったが、この一族は精神面が強く物事に動じない。これから秋に向けて馬体が成長してパンとすれば、ヌーヴォレコルトを逆転する可能性がある。距離は2000m前後がベスト。秋華賞に向けてどこまで馬体が成長してくるか注目したい。

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