桜花賞
レース回顧

アパパネはスタートを決めて好位を進み、直線でエイシンリターンズの外に持ち出して追い出すと鋭く伸びて逃げたオウケンサクラを差し切りレースを制した。勝ちタイム1分33秒3は早いが、1000万条件の芝1800mの勝ちタイムが1分44秒8。時期的に芝が成長して回復してきたこと、JRA発表の芝丈は前週と同じでも馬場造園課が芝を刈り込んだことで時計、上がりとも早くなったのだろう。アパパネは道中頭を上げて折り合いを欠くシーンがあったが、蛯名騎手が上手くなだめ、直線では落ち着いて外に持ち出した。ラスト2F目に10秒台のラップを繰り出せる持ち味をオウケンサクラのラスト11.1−11.1−12.2秒の高速ラップで殺されかけたが、最後は力で捻じ伏せた。走り慣れたコースでもあり、馬が競馬をよく分かっている。パドックではひと叩きして馬体引き締まり、落ち着いてゆったりと周回していた。栗東入りして調整され、心身ともに成長した印象。母ソルティビッドは短距離馬。次走のオークスは距離が800m延びるが、折り合いを欠くようなことがなければ、絶対能力の高さでそれなりにやれるはずだ。今年のG1はこれで1番人気が3連勝。昨年のエリザベス女王杯でブエナビスタが競馬ファンを失望させてから傾向が一変している。

オウケンサクラはハナを切って前半3F35.6秒、5F58.9秒のマイペースで進め、ラスト3Fを11.1−11.1−12.3秒でまとめて半馬身差の2着。安藤勝騎手がアパパネの持ち味の瞬発力を殺し、かつ差し追い込み馬にも厳しい流れを作り出しが、今回の条件ではアパパネが一枚上だった。07年の桜花賞で安藤勝騎手はダイワスカーレットに騎乗し、早めにスパートすることでウオッカを完封したが、今回もよく考えられた騎乗だった。これで最近5年の桜花賞は[3−1−0−1]で連対率80%。来年も勝負になりそうな馬に騎乗したら要注意。オウケンサクラはチューリップ賞で優先出走権を逃し、中1週でフラワーC、中2週で桜花賞とローテーションが厳しかったが、タフな馬で調教も動いていたし、当日は馬体も減っていなかった。母ランフォザドリーム、母の父リアルシャダイで馬体の造りから距離延びて良さそうなタイプ。オークスでも人気を集めそうだ。音無厩舎はここが勝負というときに勝負鉄(歯鉄)を履いて目一杯に走らせる。今回はフラワーCの反動はなかったが、オークスでは2戦連続で激走した反動が出ないか注意したい。

エーシンリターンズは3番手グループから直線で一旦先頭に立ちかけたが、外からアパパネに差され、内からオウケンサクラに差し返されて3着。人気はなかったが、エルフィンS1着、チューリップ賞3着の実力を示した。近走は馬体が減り続けていたが、増減なしで何とかキープできていた。前に有利な展開だったこともあるが、前につけてしぶとい脚を使えるのは今後も強みになる。坂口則厩舎の管理馬は2歳から仕上げるため、どんどん強くなる馬は少ない。ただしエーシンリターンズの母エイシンサンサンは現役時代、坂口則厩舎で小倉3歳Sを勝った後大不振に陥ったが、5歳になってエリザベス女王杯で3着に入った。その点で少し期待はある。前4走は7、11、8、11番人気で1、1、3、3着。オークスでも人気がないようなら馬券に絡めてみると面白そうだ。チューリップ賞1〜4着馬が上位を独占したが、そのうち3頭がキングカメハメハ産駒。馬場状態にもよるが、阪神芝1600mではキングハメハメハ産駒に注意ということが格言になりそうだ。

ショウリュウムーンは中団からメンバー2位タイの34.0秒で伸びて4着。1枠1番から内をロスなく進めてきたが、直線で上手く捌けず、強引に外に持ち出すロスがあった。道中内をロスなく回る有利な面もあったが、結果的には内枠がアダになった。直線でもう少しスムーズなら連対圏があったかもしれない。未勝利とチューリップ賞は馬場が渋っていたが、この走りなら良馬場でも問題なさそうだ。馬体にはまだ幼い面が残っているが、これから鍛えれば良くなっていきそう。今回もそうだったが、ゴールしたときにまだ脚色が一杯になったことがない。母の父がダンスインザダークという点でも距離が延びるオークスは面白そうだ。タップダンスシチーの佐藤哲騎手と佐々木晶調教師のコンビ。陣営の攻めに馬が耐えられれば、チャンスがありそうだ。

アプリコットフィズは内枠スタートから好位の内につけたが、直線で伸び切れず5着。舌がハミを越してフワフワと走っていた。直線で外に持ち出せず、そのまま内を走ったことも少し応えている。時計、上がりが早過ぎたことも影響しているが、今の阪神は時計が早くても馬格のある馬が有利といった感もある。馬体の成長は遅いが、飛節に力があり、踏み込みがしっかりしている。こういう馬は体が成長すれば走ってくるので要注意。母はマンハッタンカフェの全妹マンハッタンフィズ。奥手な面もあるのだろう。東京では2戦2勝。オークスは小柄な馬が活躍することが多いが、それまでに馬体がどこまでパワーアップするかに懸かっている。

シンメイフジは後方からメンバー最速の33.8秒で伸びて6着。大外から勢いよく伸びてきたが、ラスト100mで脚色が鈍った。結果的に前に行った馬が有利な展開でこれが精一杯。土曜のレースを見ても外が伸びない馬場設定だった。昨年はブエナビスタ仕様の切れ味優先の外差し馬場だったが、今年は内を通って前に行った馬が有利の高速馬場。誰の指示なのかは分からないが、馬場造園課の設定次第で馬場は替わるので注意したい。シンメイフジはひと叩きされたことで馬体の張りが良くなり、調子を上げていた。母レディミューズはオークス4着馬。ただし距離延長はプラスではなく、地力と末脚の切れ味でどうかといったイメージ。

アニメイトバイオは中団から伸び切れず8着。馬体が20キロ減っていた影響も考えられるが、直線でごちゃついてスムーズさを欠いたこと、上がりが早くなったことの方が応えたか。前走は14キロ増えて少し太めが残っていたが、それにしても20キロは減り過ぎ。陣営は馬体減を考慮して調整していたが、輸送した関東馬はみな馬体が減っていたところを見ると時間が掛かったなど何かあったのかもしれない。03年には桜花賞で馬体が20キロ減った関東馬のチューニーがオークスで巻き返して2着に入っている。最近のアニメイトバイオは頭が高く首を使えない点が少し気になるが、心肺機能が高そうな馬。牧厩舎の真価が問われそうだ。

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