エリザベス女王杯
有力馬診断

[8]ブエナビスタ
秋華賞は蟻胴の影響があり調教の動き、気配が地味だったが、今回は馬体の張り、気配、動きとも良くなっており、本来のデキに戻っている。秋華賞ではレッドディザイアの方が仕上がりが良く、レースでもスムーズだったが、それでも直線で猛追してハナ差まで詰めた。直線で馬群を捌くだけに精一杯になって鞭を一発も入れられず、ラスト1Fを過ぎたところでレッドディザイアの外に出すロスもあった。札幌記念2着、秋華賞3着と流れは悪いが、今回はその流れを断ち切れる仕上がりと直線の長い京都外回りコース。これまで安藤勝騎手が勝ちに拘ってきたことでデビューからまだ一度もまともな競馬をしていない。おそらく現時点で現役日本馬の中で能力はトップクラス。古馬の牡馬G1馬、牝馬のウオッカが相手でもやれる能力がある。

チューリップ賞で馬込みに入れる競馬をさせていれば、楽に3冠を達成できたのではないか。秋華賞は負けたが、速い流れで中団につけ、初めて馬込みに入れて捌く競馬を経験できた。これでひとつ死角がなくなる。04年のエリザベス女王杯はスローペースにも関わらず縦長の隊列になり、後方からメンバー最速の33.2秒で追い込んだ1番人気のスイープトウショウ(3歳)が0.3秒差の5着に終わった。ブエナビスタも同じような落とし穴に嵌る可能性があったが、今の行きっぷりなら安藤勝騎手は中団あたりにつけるはず。今回まともな競馬ができれば、これまでのパフォーマンスを一気に引き上げる可能性がある。想定外の馬体減、いつもと違うパドック気配、出遅れなどがなければ、日本馬には負けない可能性がかなり高い。

[7+]シャラナヤ
デビューから2000〜2100mを使われて[3−0−1−2]で前走オペラ賞(G1)を制覇。3着のミッドデイがBCフィリー&メアターフを制したことからもレースのレベルは低くない。オペラ賞では大外からいい脚を長く使って差し切り、最後は後続を引き離した。小柄な牝馬だが、インパクトのある勝ち方。ロンシャンの芝2000mで2分1秒8は早く、実際、過去10年のオペラ賞で2番目に早いタイム。欧州の重い馬場向きの馬ではなく、軽い馬場の時計&切れ味勝負に対応できそうな馬。小柄でも全体的に筋肉の付きがいい馬で、こういうタイプは日本にはいない。1990年のジャパンCでベタールースンアップの2着に突っ込んだオードのようなタイプで末脚はかなり切れそう。欧州の走る馬独特の雰囲気がある。

前脚を鋭く掻き込む走法は、サクラメガワンダーに近いが、サクラメガワンダーは京都芝1800m以上で[2−2−1−0]。シャラナヤも京都は合うはずだ。今回は調教が軽く、ジャパンCが最終目標の可能性もあるが、まずは牝馬同士のここで賞金+褒賞金(1着9000万円、2着3600万円、3着2250万円)を稼ぎたいのではないか。欧州の大馬主、アガ・カーン殿下の所有馬が日本で走るのは初めて。JRAは今後の日本競馬の国際化に向けてアガ・カーン殿下の馬が好走することはプラスになると考えているはず。騎手たちも腫れ物に触りたくはないはずだ。鞍上のルメール騎手は07年フサイチパンドラ2着、昨年リトルアマポーラで2年連続連対中。ブエナビスタより前で進めると逆転の可能性がある。

[7+]ブロードストリート
ローズSでは中団からメンバー2位の34.2秒で上がって1分44秒7のレコードで断然人気のレッドディザイアを完封した。これまで阪神芝1800mで1分45秒0以内で走って連対した馬は、ローズSのブロードストリート(秋華賞2着)、レッドディザイア(秋華賞1着)、西宮Sのナムラクレセント(アンドロメダS1着)、スマートギア(京都大賞典2着)、野分特別のスリーロールス(菊花賞1着)とみなその後京都芝で結果を出している。阪神芝1800mで1分45秒0以内で走ることは能力を測る上でひとつの目安になる数字。ブロードストリートは休み明けでこれをクリアした。スイートピーSでもローズSでも直線で追い出すと一瞬のうちに抜け出してきた。この推進力のある走りは走る馬独特のもの。

今回は距離が1F伸びて直線の長い外回りにコースに替わる点でブエナビスタに分があるが、ブロードストリートは自在性があり、立ち回りが上手いため、そこを生かし切ってブエナビスタが位置取りが悪くなるなど何かがあれば逆転の可能性は残されている。秋華賞は出遅れて後方を進み、4コーナーでブエナビスタに寄られて藤田騎手が立ち上がる不利がありながらレッドディザイアに0.2秒差まで迫った。瞬時にトップギアに入るため、道中ロスなく回って直線でタイミング良く抜け出し、そのスピードを持続させられれば面白い。ローズS、秋華賞と2戦連続で激走したが、最終調教を見る限り、いつもの推進力のある走りで反動はなさそう。流れが緩んだチューリップ賞とオークスで4着に終わったため、ある程度流れた方がいい。

[7]メイショウベルーガ
重賞では[0−0−0−4]で馬券圏内はないが、後方からいい脚を使って追い込んで0.3〜0.6秒差に入っている。昨年の秋華賞以降、ずっと条件戦を使われているが、色々な条件を使われてようやく本格化してきた。弥彦特別は後方からメンバー2位タイの33.8秒で内から差し切り勝ち。1分58秒8で走り、持ちタイムを詰めた。西宮Sはナムラクレセントに0.5秒差の3着に終わったが、直線で2頭に囲まれて目一杯に追えなかったこともある。古都Sは後方からメンバー最速の33.8秒で派手な大外一気を決めた。勝ちタイム2分12秒3だったが、昨年のエリザベス女王杯が2分12秒1なら悪くない。ここにきて馬体の実の入りが良くなってパワーアップし、走りの重心が下がってきた感がある。

昨年の秋華賞に騎乗した幸騎手は「距離はもっと長い方がいい」とコメント。古都Sはそれを裏付けるような勝ち方だった。これまでの成績から距離が2000m以上、直線が長く平坦なコースが合うタイプ。実際、この条件で良馬場なら[2−0−1−1]で上がり3Fは4戦のうち3戦がメンバー最速、残る1戦が2位と確実に切れる脚を使っている。馬体は少し太く映るが、体型的なものもあるし、元気一杯の姿からも割り引く必要はなさそう。とにかく馬が元気でバリバリ調教をこなしているのがいい。ブエナビスタが中団から強い競馬をすると追い込みが嵌る可能性がある。最近の京都外回りコースの重賞は大外からの追い込み馬が好成績。池添騎手はスイープトウショウでエリザベス女王杯での追い込み方を熟知している。

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