天皇賞(秋)
有力馬診断

3頭取り上げてその3頭で決着

[8]ウオッカ(1位評価)
最終調教で舌がハミを越してフワフワと走っていたこと、中間の調整過程などから今秋の最大目標は天皇賞(秋)ではなくジャパンCの可能性が高い。角居厩舎の管理馬はG1前になると気合が乗って戦闘モードに入るが、今回のウオッカはそこまで仕上げていない。ただしウオッカ自身、天皇賞(秋)連覇、武豊騎手は天皇賞(秋)3連覇が懸かっており、断然人気になったことからも無様な競馬はできない。ウオッカはこれまで黄菊賞2着→阪神JF1着、桜花賞2着→ダービー1着、ヴィクトリアM2着→安田記念1着、毎日王冠2着→天皇賞(秋)1着で2着の後は必ずG1を勝っている。要はひと叩きすると良くなるタイプということ。今回は目一杯の仕上げでなくても一度使った上積みはある。これくらい仕上がれば、ほとんど勝負付けが済んだメンバーなら勝負になると陣営はみているのだろう。では、なぜ次のジャパンCが目標なのか。ジャパンCに向かうは、ウオッカ、スクリーンヒーロー、オウケンブルースリあたりで昨年より日本馬は手薄になる。ドリームジャーニーは香港、マツリダゴッホは有馬記念。日本は07年にパート1国入り。国内最大のジャパンCでレベルの低いレースは見せられない。菊花賞4着のイコピコは当初AR共和国杯に向かう予定だったが、ジャパンCに直行することになった。JRAは東京芝2400mに向きそうなを集めるのに必死。ウオッカ陣営はあと1つG1を勝てば、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクトの中央G1−7勝に並ぶ。この3頭は天皇賞(秋)とジャパンCを制している。ウオッカはダービー、天皇賞(秋)を制しているが、ジャパンCは4、3着。勝てば、牝馬限定のオークスを除き、東京芝G1完全制覇。日本の牝馬でジャパンCを制した馬はいない。ジャパンCを勝てば最強牝馬の称号が手に入るのである。

今回は確たる逃げ馬は不在。JRAがコスモバルクを1枠に入れて逃げろと言っているが、コスモバルクは逃げても速いペースで飛ばさない。ウオッカのウィークポイントはスローの上がり勝負。33秒台の切れる脚があるが、スローの上がり勝負になると毎日王冠のようにより末脚が切れる馬に足元をすくわれる。東京芝1600〜2000mで前半5F59秒以下は[4−0−0−0]に対し、59.1秒以上は[0−3−0−0]で全て2着。これが如術に示している。角居調教師は昨年の天皇賞(秋)でトーセンキャプテンをダイワスカーレットに絡ませてペースアップさせ、ウオッカ向きの流れを作ったが、今年の出走はウオッカのみ。おそらくトーセンの島川氏からウオッカのためにうちの馬を使うなと物言いが入ったのだろう。トーセンキャプテンは京都大賞典で3着に入ったが、天皇賞(秋)に登録しなかった。角居調教師は、今年の天皇賞(秋)は逃げ馬不在で流れが緩む→ウオッカが足元をすくわれる流れ→目一杯仕上げず勝てればラッキー→最大目標は次のジャパンCと考えているのではないか。もちろんウオッカはそんなことは知らないため、競馬に行けば走る。武豊騎手も余裕を持って勝てるのなら天皇賞(秋)3連覇をしたいところだろう。ウオッカは東京芝1600〜2000mでは[4−3−0−0]で連対率100%。スローの上がり勝負になって差されても2着を確保している。例えここが目標でなくても、JRAが内めの好枠に入れてきたし、得意の東京なら連対を確保する可能性が高い。ただし根がマイラーだけにスローペースでジャパンCのように掛かると3着以下に終わる可能性もある。あとは昨年の同じような展開で昨年接戦した馬たちがウオッカよりスムーズな競馬をした場合に先着する可能性がある。

[7+]スクリーンヒーロー(2位評価)
春は極悪馬場の阪神大賞典を使ったことで疲労が残り天皇賞(春)14着に終わった。宝塚記念でも馬体が8キロ減って本調子には見えなかったが、直線入り口先頭から0.5秒差の5着に粘った。最後は切れ負けしたが、抜群の手応えで復調気配を見せた。今回はひと息入れて立て直し、調教後の馬体重はプラス20キロの498キロと馬体は戻っている。前向きさと集中力は健在でだいぶいい時の状態に戻っている。昨年のジャパンCでは8枠16番から外を回って直線でウオッカを交わし、外から迫ったディープスカイの追撃を振り切った。前半5F61.8秒のスローペースでラスト5F12.0−11.9−11.2−11.3−11.9秒(58.3秒)の上がりの競馬。ウオッカは折り合いを欠いて自滅したが、スクリーンヒーローは折り合いに不安がなく、前に行って早い脚を使える持ち味を最大限に発揮した。今回もジャパンCのように流れが緩むとまた持ち味を発揮する可能性がある。距離は2400m前後がベストだが、宝塚記念の直線入り口での抜群の手応えを見る限りスピードはある。1分57秒台の高速決着になると厳しいが、スローの上がり勝負なら対応できるはずだ。昨年のジャパンCでスクリーンヒーローの直後を進んだアサクサキングスに騎乗していたルメール騎手は「4コーナーまではいい手応えだったが、勝ったスクリーンヒーローの方がスピードがあり、最後はついて行けなくなった」とコメントしている。ラスト6F、5Fの上がり勝負になれば、持ち前の持続力と根性で簡単には抜かせない。ウオッカが直線で追っても、追いつけそうで追いつけないということがありうる。

[7+]カンパニー(3位評価)
07年秋以降の東京では、天皇賞(秋)0.4秒差3着(直線で前をカットされる)、東京新聞杯0.2秒差4着(直線で他馬と接触)、毎日王冠0.5秒差5着(馬体16キロ減)、天皇賞(秋)タイム差なし4着(直線で前が空かず追い出し待つ)、安田記念0.3秒差4着(後方から大外ブン回し)、毎日王冠0.2秒差1着(内からスムーズに外に出す)。ずっと掲示板を確保しているが、後方から追い込む競馬が多いため、不利を受けたり、外を回ることが多く、唯一まともに走ったのは11頭立てで行われた毎日王冠のみ。毎日王冠は前半5F60.0秒のスローペースでメンバー最速の33.0秒でウオッカを差し切った。芝1800mがベストだが、まともに走ればウオッカが相手でもそれなりにやれる。昨年の天皇賞(秋)から前半5F59秒以下では[0−0−0−4]で全てG1で4着だが、59.1秒以上では[2−1−0−0]で全て11頭以下のG2で連対を確保。流れが速くなっても自分のペースで走れば確実に切れる脚を使うが、多頭数で捌けるかがポイントになる。逆に流れが緩めば毎日王冠のようにある程度前につけて切れる脚を使うことも可能。昨年は不利な8枠16番だったが、今年は2枠3番に入った。勝った毎日王冠は4枠4番。横山典騎手は流れが緩むとみれば、毎日王冠の再現を狙うはずだ。スローペースの天皇賞(秋)を勝ったヘヴリーロマンスのイメージ。横山典騎手は当時1番人気のゼンノロブロイで2着。どうすれば勝てるのか心得ている。8歳馬でも衰えはない。

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