天皇賞(秋)
レース展望

過去10年で1番人気は[5−2−0−3]で7連対。牡馬は[4−2−0−1]で00年以降全馬連対中だが、牝馬は[1−0−0−2]で連対は昨年のウオッカのみ。単勝1倍台はおらず、2倍台は[4−2−0−0]だが、3倍以上は[1−0−0−3]で連対率25%。ちなみに昨年のウオッカは単勝2.7倍だった。2番人気は[0−3−2−5]で3連対、3番人気は[1−0−1−8]で1連対。昨年は1−2番人気で堅かったが、その前の4年は13、14、7、7番人気が連対して馬連は82倍、123倍、47倍、49倍と荒れた。

連対馬20頭のうち15頭が前走連対。99年に古馬混合G1実績のあるスペシャルウィークとステイゴールドが6、7着から巻き返したが、それ以降の連対馬は全て前走5着以内。00年以降、前走6着以下に敗れた馬は[0−0−1−41]でダンスインザムードの3着が1回あるのみ。連対馬20頭のうち17頭にG1連対があったが、最近はG1連対のないヘヴンリーロマンス、スウィフトカレント、アグネスアークが穴をあけている。この3頭は夏のローカル重賞で好走していた。最近は以前ほどG1連対経験は問われなくなっている。

ウオッカは東京芝1600〜2000mでは[4−3−0−0]で連対を外したことがない。昨年の天皇賞(秋)は1分57秒2のレコードタイムでダイワスカーレット、ディープスカイとの壮絶な叩き合いを制した。同厩のトーセンキャプテンがダイワスカーレットに絡んでペースアップ。角居調教師はウオッカのウィークポイントをよく知っている。天皇賞(秋)を勝つために渾身の仕上げで臨み、見事に天皇賞馬に輝いた。ジャパンCはスローペースで掛かって自滅し3着。ウオッカは「前走目一杯走ったわよ」と言いたかったのではないか。

東京芝1600〜2000mでは[4−3−0−0]だが、前半5F59秒以下は[4−0−0−0]で勝率100%に対し、59.1秒以上は[0−3−0−0]で全て2着。2着に負けたヴィトリアMは前半5F60.0秒、昨年の毎日王冠は59.3秒、今年の毎日王冠は60.0秒。ヴィトリアMは海外遠征明けで馬体がガレ、毎日王冠はG1前の休み明けという理由もあるが、流れが緩むと取りこぼしが多い。ダービー、天皇賞(秋)と距離をこなしているが、芝1600m[7−2−0−0]の実績が示す通り、根がマイラーなのだろう。

前走の毎日王冠は逃げて上がり3Fを33.8秒でまとめたが、カンパニーにあっさり差されて2着に終わった。角居厩舎はG2で1番人気では[2−4−2−6]で2勝しかしていない。最終調教の動きが絶好で相手関係からも単勝1.3倍に支持されたが、角居厩舎の目標はあくまでG1制覇。仕上げない、走らせないといったら語弊があるが、馬も空気を読むのだろう。毎日王冠の前半5Fは60.0秒で取りこぼしが多い流れだったが、上がり3Fは昨年と同じ33.8秒。馬場差を考慮しても昨年よりパフォーマンスを下げている。

4歳時に重賞を8連勝したテイエムオペラオー、秋のGTを3勝したゼンノロブロイは5歳秋を迎えると勝てなくなった。G1を何勝もする競走馬のピークは5歳春までなのか。ウオッカはG1で6勝を挙げ、2度のドバイ遠征がある。5歳秋を迎えてピークを過ぎたのか。毎日王冠の最終調教ではバネの利いたフットワークで活気十分の走り。パドックでは春より後肢の踏み込みにブレがなくなり、更なる進化を感じさせた。調教の動き、パドックを見る限り、ウオッカは進化している。では、なぜ毎日王冠でパフォーマンスを下げたのだろう。

昨年の毎日王冠は安田記念から4キロ増の490キロだったが、今年は6キロ増で過去最高となる498キロ。昨年より馬体に余裕を残していた。ダイワスカーレット、ディープスカイが引退し、ウオッカはこの秋の日本競馬を背負っていく存在。天皇賞(秋)とジャパンCどちらも必要不可欠の存在。3歳牡馬の重賞は勝ち馬が日替わりの状態、3歳牝馬ブエナビスタとレッドディザイアは早々とエリザベス女王杯に向うことが決まった。京都大賞典で菊花賞馬オウケンブルースリが復活してくれたことでJRAはホッとしたのではないか。

JRAの枠順決定システムは、強い馬を不利な外枠に入れる傾向があるが、ウオッカは昨年のジャパンCから全て内めの枠に入っている。天皇賞(秋)が行われる東京芝2000mはコース的に外枠は不利だが、ウオッカは4枠7番に入った。これが意味するものは何か。最終調教は栗CWで3頭併せで馬なりのまま先着。軽快なフットワークだったが、舌がハミを越してフワフワと走っていた。角居厩舎の管理馬は勝負のときは気合が乗って戦闘モードに入る。JRAはコスモバルクを1枠1番に入れてきたが、メンバーに確たる逃げ馬はいない。

カンパニーは天皇賞(秋)4年連続出走で前3年は16、3、4着。天皇賞(秋)で6歳以上の高齢馬は[0−1−1−46]と不振だが、毎日王冠ではメンバー最速の33.0秒でウオッカを差し切り、高齢馬不振のデータを破った。毎日王冠までは東京で[0−0−1−9]だったが、全て16頭以上の多頭数で中団より後ろからレースだった。これで12頭立てまでなら[5−1−0−1]で連対率85.7%。今回は18頭立てのフルゲートがひとつポイントになる。昨年の天皇賞(秋)からG1では4戦連続4着。あと一歩が足りない。

体調が安定し始めた昨年の天皇賞(秋)から前半5F59秒以下では[0−0−0−4]で全てG1で4着だが、59.1秒以上では[2−1−0−0]で全て11頭以下のG2で連対を確保。少頭数で緩い流れの切れ味勝負なら連対を外していない。昨年の天皇賞(秋)は8枠16番から後方2番手に控え、直線で内から捌いてウオッカを0.9秒上回るメンバー最速の33.5秒で追い込みタイム差なしの4着。直線で前に馬がいて追い出しが遅れるロスがあった。流れが速くても自分の位置取りで調整できるタイプ。今年は2枠3番に入った。

エアシェイディは昨年の天皇賞(秋)0.1秒差の5着。直線でデイープスカイとウオッカの間を割らずにウオッカの外に持ち出して減速したことが応えた。今開催の東京は珍しく切れ味優先の外差し馬場。今週からBコースに変更されるため注意は必要だが、エアシェイディは東京の切れ味勝負に強い。伊藤正厩舎は勝負懸かりのレースで強い調教をやり過ぎて失敗することが多いが、今回は新人騎手を乗せダートで馬なり調教。JRAが危険を察知したのか不利な大外枠に入れられたが、桜花賞のシャダイカグラのように裏技を使う手もある。

シンゲンは東京芝で[6−0−0−2]の実績がある。オールカマーは天皇賞(秋)に向けてスタイルを崩さず、中団から差す競馬で2着ドリームジャーニーに頭差の3着。心肺機能が高くスピードの持続力があるが、本格化してこれに末脚の切れ味が加わった。大歓声のあるG1でいつもよりイレ込まないことが条件。オウケンブルースリは京都大賞典で豪快な大外一気を決め完全復活。未勝利戦以来となる芝2000mで流れに乗れるかが鍵。音無厩舎はカンパニーと2頭出し。昨年のジャパンCでは3着ウオッカに0.1秒差の5着だった。

ドリームジャーニーは左回り[1−0−1−3]で内にモタれることが多い。広い東京コースは機動力を生かしにくい。7〜9月[5−1−0−0]に対し、10〜12月[1−0−1−4]で稼動期は夏。不利な条件が揃ったが、宝塚記念の勝ち馬で能力は足りる。なお11月1日から新たに16品目の禁止薬物が追加される。マツリダゴッホは中山芝[8−1−1−2]に対し、東京芝[0−0−0−3]。国枝調教師は「外枠ならその時点で終わり」とJRAを牽制していたが、7枠13番に入った。最近はJRAの外枠攻撃が続いている。

サクラメガワンダーは宝塚記念2着馬。昨年の天皇賞(秋)は0.3秒差の6着。今年は昨年より力をつけているが、休み明けでどこまで仕上がってくるか。福永騎手(カンパニー3着)は07年の天皇賞(秋)でコスモバルクで斜行した五十嵐冬騎手に対し「もうG1で騎乗しないで欲しい」とコメントしたのが印象的。当時コスモバルク、エイシンデピュティ(コスモバルクに驚いて寄れて降着)は2枠3番、1枠2番だったが、今年は1枠1番、8枠17番に引き離した。競馬ファンが見たいのは全馬が力を出し切るレース。好レースを期待。

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