秋華賞
レース回顧

レッドディザイアは8番手から徐々に進出し、直線で内から捌いて鋭く抜け出すと最後は外から迫ったブエナビスタをハナ差凌ぎ切ってレースを制した。前半5F58.0秒でレースのラスト3Fは12.0−11.6−11.6秒で尻上がり&持続ラップ。古馬が相手でも勝てそうなレースぶりだった。四位騎手が勝つ競馬をすると宣言していたが、まさにブエナビスタに勝つにはこれしかないというほぼ完璧な騎乗。人馬一体の素晴らしい走りだった。馬体は14キロ減っていたが、前走より馬体の張りが良くなり活気十分。気配の良さが目立っていた。最後の一冠を獲るために渾身の仕上げを施してきたようだ。ようやくブエナビスタに勝ったが、今回はレッドディザイアの方が調子&仕上がりが良く、コースも直線の短い内回りで脚質的にレッドディザイアに分があった。ブエナビスタはジャパンCに向う可能性があるが、次のエリザベス女王杯でブエナビスタを負かして初めてブエナビスタを超えたといえるのではないか。勝てば最優秀3歳牝馬の称号が手に入る可能性が高まる。エリザベス女王杯に向けては、今回仕上げたため、反動がないことが条件。ブエナビスタが調子を上げてくると切れ味の差で逆転される可能性がある。ブエナビスタを完封するには、手前の矯正ともうひと工夫が必要。

ブエナビスタは中団の後ろから内ラチ沿いを進み、直線で内から捌いてメンバー2位の34.3秒で上がったが、レッドディザイアを交わせずにハナ差の惜しい2着。長い審議の結果、4コーナーでブロードストリートの進路を妨害したため3着に降着になった。安藤勝騎手はこれまでのブエナビスタのスタイルを捨てて内から捌いてきたが、直線では馬群を捌くだけで精一杯。結局、一発も鞭を入れられなかった。桜花賞、オークスでは鞭を入れてからガツンと伸びただけに鞭を入れていれば差し切っていたかもしれない。さらに直線では内から捌いてレッドディザイアの外に出すロスもあった。そのあたりを考えると負けて強しの内容。今回、馬込みで進めて直線で馬群を捌いたことは今後に繋がりそうだ。末脚の切れる馬にこういう競馬をされると死角がなくなる。本来はチューリップ賞で馬込みに入れるべきだったが、それをせずに勝ちに拘ったことが今回の差に表れたのではないか。馬体は4キロ減で少し細く映ったが、相変わらず物事に動じず落ち着き十分。いい意味で春と変わりなかった。次走はジャパンCかエリザベス女王杯になる予定。どちらに出ても主役になる可能性がある。

ブエナビスタの降着に関しては、パトロールビデオを見る限り、前でバテたワイドサファイアを避けるためにレッドディザイアが外に少し出したことに直後にいた安藤勝騎手が同調したものでこれで降着とは厳し過ぎるというのが正直な印象。NHKマイルCのテレグノシス、オークスのトールポピーは降着にならなかったが、あれよりは酷くないように見える。ブエナビスタが写真判定で2着に負けていたこと、ブロードストリートがまともなら勝ち負けに加われたことが考慮されたのだろうか。競馬は勝ち負けもあるが、全てにおいてフェアでなければならない。今回のような降着があるとレースが台無しになる。今後はこういうことをなくす努力を騎手たちがすべきだろう。ごちゃつきやすいコースでバテて下がってくる馬がいればごちゃついて当然。このコースではこういうことが起こりえると騎手たちの意識レベルのアップが必要なのではないだろうか。いいレースを見せるという立場では敵も味方もない。今回のことをいいきっかけに何かしらのアクションを期待したい。

ブロードストリートは出遅れて後方2番手を進み、4コーナーではブエナビスタに寄られて藤田騎手が立ち上がる不利があったが、内を突いて鋭く伸び、0.2秒差の3着まで追い上げた。出遅れたことで持ち味の自在性、器用さを生かせなかったが、4コーナーで不利がありながらメンバー2位の34.3秒で上がって0.2秒差まで詰めたのだから大したもの。スタートを決めて陣営が思い描いていた競馬ができていれば、レッドディザイアに迫ったかもしれない。追い出すと一気にトップギアに入る馬で直線での伸びは目立っていた。レコードで激走した反動は全くなく、パドックでは馬体を大きく見せて前走より気配が良くなっていた。藤田騎手は不利を受けた後、強引に内に切れ込んだが、内にいたミクロコスモスの武豊騎手が進路を譲らなければ、自分が降着になっていた可能性もある。次走はエリザベス女王杯に向う予定。距離延長はプラスとは言えないが、今度は持ち前の自在性と立ち回りの上手さを見せて欲しいもの。藤田騎手の乗り方次第で逆転の可能性はあるとみたい。

ミクロコスモスは出遅れて最後方を進み、直線で最内からメンバー最速の34.2秒で伸びてきたが5着止まり。直線でブロードストリートが内に切れ込んできたため、手綱を引いて減速するロスがあった。あのままの勢いで突っ込んできていれば3着があったかもしれない。もしあそこで強引に突っ込んでいたら大変なことになっていた。武豊騎手の状況判断はさすが。神様をこういうところをよく見ている。今後何かがいい方に向くのではないかと思っていたら、10月22日のエーデルワイス賞をオノユウで制した。この秋のG1はリーチザクラウン、ウオッカと有力馬が揃っている。ミクロコスモスは折り合いに難しい面があり、後方から追い込む極端な競馬をしているが、馬体、折り合いは着実に良くなってきている。夏の札幌の大倉山特別で直線一気を決めた姿が印象的。来年のクイーンSではいいパフォーマンスを見せるのではないか。

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