京成杯AH
レース回顧

ザレマは内の2、3番手を進み、直線で外に持ち出して追い出すとしぶとく伸びてレースを制した。直線で競り負けて差されることが多かった馬が、勝負どころで控えて脚をタメ、最後にひと伸びして重賞初制覇。内枠スタートから押して前に行き、勝負どころで上手くタメを作った内田博騎手の好騎乗。これまで重賞を勝てなかった馬をテン乗りで勝利に導いたのだから凄い。1番人気のヒカルオオゾラに騎乗した武豊騎手とは対照的な騎乗だった。暑さで馬体が大きく減る馬が多かったが、ザレマは2戦連続馬体増だったため、絞れて丁度良くなっていた。忘れな草賞で強い勝ち方をしたため、中距離を使われることもあるが、距離が長いとズブさを出すため、芝1400〜1600mが合っている。今後は富士Sまたは府中牝馬SからマイルCSに向う予定。マイルCSに向けてどこまでパフォーマンスを引き上げられるか。

アップドラフトは内ラチ沿いの中団から直線で馬群を捌いて鋭く伸びて2着に突っ込んだ。ザレマと同様に道中内ラチ沿いをロスなく回って内から捌いてきたことが功を奏した印象。直線でザレマが外に持ち出し、前にスペースができたことも大きかった。小倉芝1800mの博多Sを好ラップで勝った馬で高速決着に対応できる下地はあったが、今回はハンデ53キロ、内ラチ沿いをロスなく回ってきたことが味方した感が強い。安田隆厩舎は今年8月以降の重賞で[2-4-1-0]で複勝率100%をキープ。トランセンドがレパードS、シンメイフジが新潟2歳Sを勝つなど、今まさに絶好調。今年29勝で現在リーディング4位。今勢いがあるので注目していきたい。

マイネルスケルツィは外枠スタートから2番手につけて直線で抜け出しかけたが、最後に脚が鈍って3着。前に行く自分の競馬はできたが、最後に甘くなった。ひと叩きされても脚捌きが硬くなることもなく、仕上がりは良かったが、詰めが甘く勝ち切れない面を改めて露呈した。07年に京都金杯を勝った後、芝1600mでは[0-0-6-2]で3着率66.7%。とにかく3着が多い。渋った馬場の芝1600mでは[2-0-3-0]で複勝率100%。稍重の関屋記念で13番人気で激走したように馬場が渋ったときは要注意。休み明け、前走負けて人気が落ちたときに馬券的妙味がある。石橋脩騎手はなかなか重賞を勝てないが、もうひと工夫すればチャンスがありそうだ。

ケイアイライジンは出遅れて後方2番手を進み、直線で馬群を捌いて鋭く伸びてきたが4着が精一杯。上がり3Fはメンバー最速の34.5秒。ゴールした後は突き抜けていた。スタートで躓いて位置取りが悪くなったのが致命的だった。まともなら楽に馬券圏内があったのではないか。それでも初の古馬相手で今後の目処が立つ上々の内容。馬体が大きく減る馬が多い中、休み明けで2キロ減。久々でも馬体は仕上がり、気配もまずまずだった。心肺機能が高く、ハイペースの混戦に強いタイプ。もう少し器用さと自在性が欲しいが、キャリアを積めばクリアできそうだ。

タマモナイスプレイは中団から伸び切れずの6着。2着のアップドラフトとは0.1秒差。最後はしぶとく伸びてきたが、それほど切れる脚を使える馬ではないため、道中もう少し前につけていればといったところ。関屋記念と今回で決め手不足が露呈されたが、今、馬体の造り、調教の動きが良くなってきたところ。この経験は今後に生きてくるはずだ。これまでのレースぶりから芝1600mでは終いが少し甘くなるため、ベストは[3-0-0-2]の芝1400mかもしれない。フジキセキ産駒は1400mが得意な馬が多い。全兄タマモホットプレイはスワンSの勝ち馬で芝1200mでも活躍した。

ヒカルオオゾラは中団の外を進んだが、直線を欠き9着。直線で馬群に包まれて追い出しが遅れ、武豊騎手が急坂で追っても反応しなかった。前に行った馬が止まりにくい開幕週。朱雀Sで好位から1分32秒5で楽勝した馬だけに掛かり気味でも前に行かせるべきだったのではないか。最近の武豊騎手を象徴するかのような負け方だった。馬体が14キロ減っていたが、それが敗因とは思わない。馬体の造りが目立つ馬で重賞を勝つ力もあるが、折り合いが難しく、大飛びで器用さがなく、首が長く一気にトップギアに入らないため急激なラップ変化に弱いタイプ。その点を考慮した上で狙っていきたい。

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