スプリンターズS
有力馬診断

[7+]アストンマーチャン
桜花賞を負けた時点で目標をスプリターズSに切り替え、北九州記念をひと叩きし万全の仕上がり。最終調教は迫力のあるフットワークで動き、気配とも目立った。初の関東への輸送、中山競馬場で馬が戸惑って馬体が極端に減ったり、イレ込むようなことがなければ力は出せそうだ。北九州記念の敗因は展望に書いた通り。7着のサンアディユはセントウルSで巻き返している。これまで古馬と対戦したのは北九州記念のみで古馬の一線級を相手に通用するという保障はない。ではなぜ1位評価なのか。相馬眼的な評価を含め、これまで見せてきたパフォーマンスからスプリントG1を勝つ能力があると推測されるからである。今年の3歳牝馬はレベルが高く、その中でアストマーチャンは短い距離ではトップレベルにいる存在。ファンタジーSでは直線で弾けて5馬身差の圧勝。勝ちタイム1分20秒3は全場芝1400mの2歳戦最速タイム。阪神JFではウオッカにクビ差の2着。1分33秒1は全場芝1600mの2歳戦最速タイム。スピード能力は相当なものがある。

芝1200mは[2-1-0-1]で小倉2歳Sを勝ちがある。小倉2歳Sは前半3F32.5秒のハイペースだったが、早め先頭から楽々と押し切った。抜群のスタートを切り、2F目から2F続いた10秒台のラップを馬なりのまま追走し、3、4コーナーでは一頭だけ違う手応えで先頭に並びかけた。スピードの絶対値が違うといった勝ち方だった。2歳時に前半3F32.5秒より早い流れの芝1200mを勝った馬は、フェアリーSのサーガノヴェルと小倉2歳Sのアストンマーチャンしかいない。サーガノヴェルは3歳時にスプリンターズSで11着に敗れたが、新潟で行われた年だった。次走中山芝1200mの秋風Sでは1分7秒1の高速タイムでサニングデールに勝っている。小倉最終週の荒れ馬場で前半3F32.5秒のハイペースで飛ばして勝ったことは評価できる。小倉2歳Sではメイショウボーラーが前半3F32.9秒で飛ばして逃げ切っているが、昨年のスプリンターズSでは2着に入った。

このあたりから見てもアストンマーチャンがスプリンターズSで激走する下地はある。近年のスプリント戦線はレベルの低いレースが続いており、今年は外国馬の参戦がない。さらに出走馬の半数が休み明けで馬インフルエンザの影響で帰厩が遅れた馬も多い。北九州記念をひと叩きして少し間隔を空けて臨むステップは理想的。ただしG1は楽に勝てるものではない。いくらスピードがあっても道中掛かれば終いが甘くなるし、ハイペースで競い合いになれば消耗する。テン乗りの中舘騎手がいかに折り合えるかがポイント。00年以降の芝1200mで中舘騎手は逃げると[8-2-0-12]で勝率36.4%、連対率45.5%。1番人気で[5-1-0-1]というのが凄い。石坂厩舎は00年のスプリンターズS(稍重)をシンガリ16番人気のダイタクヤマトで逃げ切っている。中舘騎手を配してきたのは、今年は人気馬で逃げ切るという意思表示なのだろう。

[7+]サンアディユ
今年のスプリント重賞は高松宮記念のスズカフェニックスを除き、レベルの低いレースが続いていたが、サンアディユがセントウルSを5馬身差で圧勝してそれを打ち破った。勝ちタイム1分7秒1は02年のセントウルSを勝ったビリーヴと同じレコードタイム。ビリーヴは前半33.6秒、後半33.5秒、サンアディユは前半33.5秒、後半33.6秒で2頭ともラスト1Fを11秒台でまとめている。これは高いスプリント能力がないと出せないタイム。アイビスSDでも強い勝ち方をしたが、芝3戦目で本来のスプリント能力を発揮したのだろう。今回のメンバーで前後半33秒台、ラスト1F11秒台で走ったことがある馬はサンアディユしかいない。これは大きな武器であり、このメンバーではスプリント能力が抜けている可能性もある。アストンマーチャンはそのレベルの時計の裏づけがない。馬体が18キロ増えてこのタイムで走ったことは完全本格化を示している。G1を勝つのに必要な十分なインパクトもあった。

ダートでは7馬身差、5馬身差、3馬身半差、1馬身差をつけて逃げ切っており、当時から圧倒的なスピードを示していた。アイビスSDはダート短距離馬の激走が多いので使ったのだろう。セントウルSで見せたパフォーマンスは陣営を驚かせた。ビリーヴと同じラップで走ったのだから当然。このラップの裏づけがあれば、輸送で馬体が減るなど想定外のことがない限り好勝負になるはずだ。死角があるとすれば、前半3F32秒台のハイペース。アイビスSDは出遅れてサンアディユ自身は前半3F33.3秒、セントウルSは33.4秒だった。北九州記念は道中揉まれた影響もあるが、前半3F32.1秒のハイペースで自身は32.5秒。前半3F33秒台で入れれば、後半は33秒台で上がれる。川田騎手が他馬につられず自分の競馬をできるかに懸かっている。ただしアストンマーチャン陣営はサンアディユの死角を知っている可能性が高い。フレンチデピュティ産駒で雨はプラスに働く。

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