ダービー
レース展望

第74回、日本ダービー。04年のダービーの展望では「NHKマイルCで次元の違うレースをしたキングカメハメハは別格。相馬眼的な裏づけがあるだけに能力は確か」、05年は「ディープインパクトは相馬眼的に見ても今年のメンバーでは抜けた存在。過去4戦で見せたパフォーマンスから現時点で現役最強馬の可能性もある。いや世界レベルかもしれない」と書いた。2頭はともに2分23秒3のダービー最速タイムで圧勝した。昨年は相馬眼的に評価できるアドマイヤムーンは距離が課題で強力にプッシュできず「前2年のレベルの馬はいないが、例年と比べてもメンバーは粒揃いでレベルは低くはない」と書いた。

今年は相馬眼的に評価できる馬が2頭いる。1頭はウオッカ、もう1頭はフサイチホウオー。今年の3歳牝馬の一線級はハイレベル。桜花賞で3強を形成したダイワスカーレットは半兄ダイワメジャーを負かすパフォーマンスを秘めている。アストンマーチャンは夏を順調に過ごせばスプリンターズSを勝つのではないか。桜花賞の展望で「ウオッカはアドマイヤオーラ、フサイチホウオーより能力の絶対値が高い可能性がある」と書いた。フサイチホウオーはオーナーの要請で、松田国調教師はダービーを勝つためにここまで進めてきた。皐月賞のゴール前の伸びを見て、ダービーはフサイチホウオーと思った人が多いのではないか。今年はこの2頭が鍵を握っている。

過去10年で1番人気は[7-2-1-0]で9連対。97年にメジロブライトが3着に敗れたが、それ以外は連対しており、現在6連勝中。1番人気の信頼度が最も高いG1となっている。2番人気は[1-1-0-8]で2連対、3番人気は[1-4-2-3]で5連対。連対馬20頭のうち18頭が5番人気以内で馬連は10倍以下が6回と堅く収まることが多い。96年に重賞未勝利のフサイチコンコルドが勝ったが、過去10年では連対全馬に重賞勝ちがあった。ハイレベルな戦いで重賞未勝利馬では厳しい。最近4年の連対馬は全て前走重賞勝ち馬。最近は前走重賞を勝って勢いに乗る馬が好成績を挙げている。

ウオッカはこれまで[4-2-0-0]で連対率100%。デビューから5戦連続で上がり3Fはメンバー最速、桜花賞はメンバー3位タイ。ある程度前につけて切れる脚を使える。最近4戦はマイル戦を1分33秒台で走っている。1986年以降、3歳の4月までにマイルを1分33秒台で走って複数回連対した馬はウオッカとダイワスカーレットしかいない。阪神芝1600mが外回りコースになったこともあるが、ウオッカは京都芝1600mのエルフィンSで56キロを背負って1分33秒7で楽勝している。この勝ちタイムはエルフィンSで断トツの最速タイム。2F目から最後まで11秒台のラップを持続し、最後は抑える余裕があったのだから凄い。

新馬戦は逃げて3馬身半差で楽勝。ラスト4Fは全て11秒台。今年の出走メンバーで1600m以上でラスト4Fが11秒台のレースを勝った馬はウオッカしかいない。デビュー当時からスピードの持続力の高さを示している。黄菊賞は2着に負けたが、今後を考えた陣営が控えるレースをしたもの。勝ったマイネルソリストはラジオNIKKEI杯2歳Sで0.2秒差の4着に善戦している。阪神JFは直線で抜け出したアストンマーチャンを豪快な末脚で差し切った。父タニノギムレットを彷彿させる末脚はインパクトがあった。勝ちタイム1分33秒1は前日のゴールデンホイップT(1600万条件、勝ち馬エイシンドーバー)の勝ちタイムを1.0秒上回った。

エイシンドーバーはその後阪急杯と京王杯SCを制している。エルフィンSは好位から早めに抜け出してメンバー最速の34.0秒で3馬身差の圧勝。勝ちタイム1分33秒7は1週前の京都牝馬Sの2着に相当するタイム。京都牝馬Sの上位馬より重い56キロを背負って最後抑える余裕があった。チューリップ賞はダイワスカーレットとの一騎打ちをクビ差で制した。四位騎手は最後まで鞭を使わなかった。勝ちタイム1分33秒7は翌日の道頓堀S(1600万条件、勝ち馬ピカレスクコート)と同タイムで1週前のアーリントンC(勝ち馬トーセンキャプテン)の勝ちタイムを0.2秒上回った。ピカレスクコートはその後ダービー卿CTを制している。

アーリントンC2着のローレルゲレイロはその後皐月賞で0.3秒差の6着、NHKマイルCで0.1秒差の2着に善戦している。桜花賞は先にスパートしたダイワスカーレットを捉えられず1馬身半差の2着。ラスト2F目で10.6秒と早くなったところで内に寄れてバランスを崩した。即座にトップスピードに乗るタイプではないため、この減速が致命的だった。四位騎手は本来の行きっぷりじゃなかったとコメント。土曜の雨で馬場が緩かったことが微妙に影響している可能性がある。ダイワスカーレットはシンザン記念の展望で「今年の3歳牝馬のトップレベルは強い。牝馬のダービー馬。スーパーサプライズがあるかもしれない。」と書いた馬。

松田国調教師はフサイチホウオーがいなければ、牡馬にぶつけたのではないか。中京2歳Sではアドマイヤオーラを子供扱いしている。ウオッカは桜花賞2着でダービー挑戦は白紙になったが、オークスには登録すらせず参戦してきた。角居調教師は「勝ち負けは別にしてウオッカを見に来てもらいたい」とコメントしたが、それが本心ではないだろう。桜花賞前にはオークスとアメリカンオークスを制したシーザリオよりウオッカの方が上とコメント。長距離輸送、距離2400m、一線級牡馬相手と条件は厳しいが、相馬眼的に通用する下地はある。四位騎手は前2年のダービー(シックスセンスとドリームパスポートで3着)で何かを掴んだはずだ。

フサイチホウオーは東京芝1800mの新馬戦を好位からメンバー最速の35.6秒で抜け出して3馬身半差で圧勝。時計、上がりとも遅くレースのレベルは高くはないが、直線で唸るように伸びてきた姿は父ジャングルポケットを彷彿させた。東スポ杯2歳Sは好位から抜け出して最後にフライングアップルとドリームジャーニーに迫られたが、アンカツの鞭が飛ぶとグイッとひと伸びして半馬身差でレースを制した。まだキャリアが浅く若さ丸出しといった感じだったが、課題と思われたスローの上がり勝負に対応してレースのラスト3Fは11.7-11.3-11.3秒でラスト2Fが持続ラップ。並んだら抜かせない勝負強さを見せた。

ラジオNIKKEI杯2歳Sは中団からメンバー最速の34.3秒で差し切り勝ち。直線で内に寄れて審議の対象になったのは頂けないが、外差しが決まりにくい馬場で外を回って差し切ったことは評価できる。ただし勝ちタイムは同日の新馬戦(勝ち馬ケープポルト)より0.6秒遅い。新馬戦の方が前半5Fは0.5秒遅かった。そこは気になるが、2着のヴィクトリーは皐月賞を制している。共同通信杯は中団から外を回って抜け出してダイレクトキャッチの追撃を完封。他馬より1キロ重い57キロを背負って外を回って勝ったのだから強いが、後続を突き放せなかったところは物足りなかった。

上がり3Fはダイレクトキャッチがメンバー最速でフサイチホウオーより0.2秒早かった。アンカツは「直線ではもう少し鋭く伸びて欲しかった」とコメントしている。父ジャングルポケットはダービーを勝ったが、共同通信杯でインパクトのある勝ち方をしている。皐月賞は父ジャングルポケットと同じ1枠1番でスタートが遅く後方を追走。4コーナーから直線で外に出して上がり3Fメンバー最速タイの33.9秒で追い込んできたが、ハナ+ハナ差の3着に敗れた。松田国調教師は何もコメントせずに競馬場を後にしたという。勝ったヴィクトリーの上がり3Fは35.9秒でフサイチホウオーとの差は2.0秒差もあった。この差は一体何を示しているのだろう。

これまでフワフワと走っていた馬が、最後に鋭く伸びてきたことは評価できる。あの末脚でアンカツは東京芝2400mならと手応えを掴んだのではないか。ただ9Rの野島崎特別(1000万条件)で大外を回って勝ったブレーヴハートの上がり33.6秒がフサイチホウオーを0.3秒上回っているのは少し気になる。皐月賞の勝ちタイム1分59秒9は前週のエイプリルS(勝ち馬タイガーカフェ)より0.1秒遅い。昨年の皐月賞はエイプリルS(勝ち馬マチカネキララ)より0.2秒遅かったが、皐月賞当日は良発表も雨で馬場が湿っていた。10Rの卯月Sの勝ちタイムは昨年が1分34秒5に対し、今年は1分33秒5で昨年より1秒早い。

フサイチホウオーは父ジャングルポケットと同じ1枠1番から追い込む競馬で父と同じ3着。父はダービーで巻き返したが、皐月賞を勝ったアグネスタキオンは屈腱炎で引退していた。フサイチホウオーの皐月賞3着は、レースとしては2002年の皐月賞で追い込んで3着に敗れたタニノギムレットに近い。タニノギムレットはNHKマイルC3着の後、ダービーを制している。フサイチホウオーはジャングルポケット、タニノギムレット(松田国厩舎)のレベルに到達したか。松田国調教師は皐月賞の走りではダービーは勝てないと見ているのか、今回は調教でかなり攻めている。最終調教で騎乗したアンカツは自信のコメント。ただラップを分析すると死角が見え隠れする。

木曜に枠順が確定した。ウオッカは父タニノギムレットがダービーを勝ったときと同じ2枠3番。阪神JFのイメージから内枠は良さそうだ。フサイチホウオーは関口氏のフサイチコンコルドがダービーを勝ったときの7枠(13番)は同じだが、馬番は違う15番。15番は過去10年のダービーで[0-0-4-6]で最も3着が多い馬番。1997年のダービーをサニーブライアンが逃げ切ったときに1番人気で3着に敗れたメジロブライトが15番だった。最近3年のダービーは四位騎手が15番でコスモサンビーム12着、シックスセンス3着、ドリームパスポート3着。アドマイヤオーラは母ビワハイジがダービーに出走したときと同じ7枠14番に入った。JRAは粋なことをする。

先週のオークスはコロネーションS(英G1)に登録していたローブデコルテが勝った。ダービー出走馬ではウオッカとフサイチホウオーの2頭が凱旋門賞(仏G1)に登録している。オークスは正攻法のレースをした1番人気のベッラレイアは2着。G1を勝つには何かが足りなかったのだろう。ウオッカ、フサイチホウオーはダービーを勝てるのだろうか。牝馬のダービー参戦は1996年のビワハイジ(13着)以来11年ぶり。過去には1937年にヒサトモ(4人気)、1943年にクリフジ(1人気)が制している。ウオッカの6代母シラオキは1949年のダービーで2着(12人気)。シラオキ系ではスペシャルウィーク(4代母シラオキ)がダービーを制している。「名門」の血が騒ぐかもしれない。

*ウオッカとフサイチホウオーの核心部分と各馬の詳細は有力馬診断と相馬眼予想でお届けします。(有料版)

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