JCダート
レース展望

今年で第5回を迎えるジャパンCダート。今年は米、英、独から各1頭が参戦する。昨年はゴール寸前で11番人気のフリートストリートダンサー(米)がアドマイヤドンを差し返して穴をあけた。フリーストリートダンサーは重賞勝ちがなくレーティング111と低かった。もう1頭の外国馬オウタヒアはレーティング116だったが9着に敗れた。外国馬はレーティングや重賞実績より日本のダートの適性を重視しないといけない。ただ昨年は不良馬場の影響もかなりあったか。

過去4年で1番人気は[1-1-1-1]で連対率50%。2番人気は[0-0-0-4]でゴールドアリュールの5着が最高。外国馬は13頭が出走して[0-1-1-11]で連対は昨年のフリートストリートダンサーのみ。かなりの実績を引き下げて来日した01年のリドパレス(米)は2番人気に支持されたが、クロフネに楽々と交わされて8着に敗れた。それ以来、外国馬は人気になりにくくなっている。日本馬は東京ダートで実績のある馬が活躍している。

今年の1番人気はアドマイヤドン。これで3年連続で1番人気。昨年の秋からここまで[6-2-0-1]でドバイWCで8着に敗れた以外は全て1番人気で連対を確保している。アンカツが手綱を取ったときは1度も日本馬に先着を許していない。前走は2分2秒4のレコードで勝ち、JBCクラシック3連覇を達成した。昨年のジャパンCダートは単勝1.5倍に支持されたが、今年もかなり人気になりそうだ。果たして死角はないのだろうか。

昨年はエルムSで9馬身差、南部杯で4馬身差、JBCクラシックで3馬身差と圧倒的な勝ち方だったが、今年はフェブラリーSで半馬身、帝王賞でハナ差、南部杯でユートピアに半馬身差の2着、JBCクラシックで3/4馬身差と圧勝がない。アンカツが騎乗しなかったとはいえ、南部杯で約20ヶ月ぶりに日本馬に先着を許した。ドバイ遠征前のフェブラリーS、遠征後の帝王賞は仕方ないが圧倒的な強さは昨年より薄れてきている。

テイエムオペラオーが00年に重賞8連勝(G1-5連勝)した翌年は天皇賞(春)を勝った後、宝塚記念2着、天皇賞(秋)2着、ジャパンC2着、有馬記念5着とG1を勝てなかった。それが今年のアドマイヤドンと同じ5歳のときのこと。前走のJBCクラシックで衰えがないことを証明したとも言えなくもないが、負けるとすればこのあたりだろう。前走が昨年9月以降の最低体重となる446キロ。賢い馬で自分で体を作るようだが、さらに減るようだと突け入る隙が出てくるかもしれない。

その他で人気になりそうなのはローエングリン、トータルインパクト、タイムパドックス、ユートピアあたりか。ローエングリンは2歳時に東京ダ1600mの未勝利戦を逃げて3馬身差で勝って以来となるダート戦。元々ダート調教で動いていたし、脚捌きからもダート適性はありそうだ。詰めの甘さをダートでカバーできるかもしれない。ただ今回は同型が揃っているので、流れや砂を被ったときにどうなのかが気になるところ。横山典騎手はどんな競馬をするのだろう。父シングスピールはジャパンCを制した翌年に初ダートでドバイWCを制した。この血が騒げば大駆けもありそうだ。

トータルインパクトは今年7月のハリウッドゴールドC(ダ2000m)でG1初制覇。本来ならブリーダーズCクラシックに向かうところだが、父シュトゥーカが種牡馬登録しておらず出走するには約8000万円の登録料を払わなければならないため、ジャパンCダートを目標にしてきたようだ。ハリウッドゴールドCはJRAのボーナス支給対象レースで今回勝つと1億円のボーナスが支給される。勝てば2億3000万。陣営はやる気十分か。能力はあるので、あとは東京のダートに合うかどうかだろう。そこの見極めがポイント。

タイムパドックスは昨年10月から休みなく使われて今回が15戦目。それにしてもタフな馬だ。これまでは1800mくらいまでを守備範囲にしていたが、ダ2300mの東海Sで2着したのを皮切りにブリーダーズGP(ダ2300m)1着、白山大賞典(ダ2100m)1着と長い距離で結果を出してきた。地力が強化されたのだろう。JBCクラシックはアドマイヤドンに0.7秒差の完敗だったが、今度は武豊騎手が2戦目。距離延長を含めてもう少し差を詰められそうだ。

ユートピアは南部杯で逃げてアドマイヤドンを完封した。ダート左回りは[4-0-0-2]で勝率66.7%。ユニコーンSが強い勝ち方だったが、やはり左回りのマイルがベストなのだろう。前走のJBCクラシックは逃げてアドマイヤドンと0.9秒差の4着。ただ前半からハイラップで飛ばしたことを考えれば悪くない内容だった。昨年はJBCクラシックで砂をもろに被ってから不振に陥ったが、今はブリンカーの効果などもあり、完全に立ち直っている。今回は距離が少し長いが、ペース次第でしぶとさを発揮しそうだ。テン乗りだと馬がまじめに走るので、デムーロ騎手は加点材料。

穴で注目したいのはジンクライシス。これまでダートで[4-4-0-0]とまだ底を見せていない。ヒヤシンスSでカフェオリンポスに0.3秒差の2着だったが、その後カフェオリンポスはジャパンダートダービーを2分4秒5で2着に3馬身差をつけて楽勝している。そのとき0.7秒差4着のアジュディミツオーがJBCクラシックでアドマイヤドンと0.2秒差の2着。ジンクライシスは賞金が足りずに裏街道を歩んできたが、1000万条件の猪苗代特別で9馬身差の圧勝、1600万条件のブラジルCを1馬身3/4差で勝ち、楽々とオープン入りを果たした。

今回は初重賞挑戦で強豪が揃うG1レース。しかも距離経験のない2100mと厳しい条件が揃っているが、同じ3歳外国産馬のカフェオリンポスやパーソナルラッシュが大化けしたようにこの馬も大化けする可能性があるとみる。1800mまでは結果を出しているので、あと300mを何とか踏ん張れないか。ダ2000m前後でアドマイヤドンと勝負づけが済んでいる馬では逆転は難しい。一発逆転があるとすればこういうタイプだろう。逃げ馬が揃ったので好位からしぶとさを生かす競馬。展開は向きそうだ。

2004/11/25
競馬アナリストGM

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