天皇賞(秋)
レース展望

3歳馬と古馬がしのぎを削る秋の大一番。大本命馬キングカメハメハが右脚屈腱炎を発症し突然の引退。この馬の活躍を楽しみにしていた競馬ファンも多いことだろう。少し気が抜けた感じがするのは気のせいか。ただし、ダイワメジャー、アドマイヤグルーヴ、ダンスインザムード、サクラプレジデントなどが次々に出走を表明し、かなりのメンバーが揃った印象。当初は天覧競走だったので、キングカメハメハ回避でJRAがメンバーを集めたこともあるのだろう。メンバーは揃ったが、各陣営の思惑がかなり入り混じる。能力や適性が重要なのはもちろんだが、陣営の勝負度合いを読み取らないと馬券は獲れないだろう。

過去10年で1番人気は[2-2-1-5]で4連対。00年にテイエムオペラオーが勝つまで府中の2000mには魔物が棲むとよく言われたものだ。最近4年で1番人気は1、2、13、1着と堅実だが、連対したのはテイエムオペラオーとシンボリクリスエス。今年のメンバーに2頭のレベルに到達している馬は果たしているのだろうか。ごまかしの利かない府中の2000m。ハイレベルの一戦で能力のない馬では通用しない。今年はG1馬は6頭いるが、古馬混合G1を勝ったのはヒシミラクルとツルマルボーイしかいない。上位と下位の馬の能力差はありそうだが、上位の馬同士の実力は接近している。混戦と言っていいだろう。

人気になりそうなのは、ゼンノロブロイ、テレグノシス、ツルマルボーイ、シルクフェイマス、ナリタセンチュリーあたりか。ゼンノロブロイは昨年の神戸新聞杯以降勝ち星に見放されているが、有馬記念3着、天皇賞(春)2着、宝塚記念4着とG1で堅実に走っている。G2でも勝ち切れないが、安定感が好きな日本人。鞍上がペリエなら1番人気だろう。宝塚記念は4着に敗れたが、明らかに鞍上のミス。ただペリエも菊花賞で大きなミスを犯している。京都大賞典は岡部騎手がほぼ完璧に乗ったが、それでも2着だった。東京コースはダービー2着、青葉賞1着がある。神戸新聞杯以来となる芝2000mで果たして弾けるのか。雨が降るようだと先行力が武器になるかもしれない。

テレグノシスは毎日王冠で最後方から差し切り勝ち。メンバー最速の33.4秒の末脚は凄かった。今年は東京コースにこだわったローテーションで京王杯SC2着、安田記念2着と全て連対を果たしている。一昨年は馬体減、昨年は海外遠征疲れとこれまで秋はイマイチの成績だったが、今年はこれまでと調教の動きが全く違う。5歳秋を迎えて馬が完全に本格化したのだろう。問題は距離だが、前走の競馬を見る限りは何とかこなせそう。ただ今回はG1レースでハイレベルのメンバーが揃うだけにこなせる程度ではどうなのだろう。マイラーのエアジハードは3着が精一杯だった。あとは展開と馬場だろう。

ツルマルボーイは安田記念で念願の初G1制覇。テレグノシスとクビ差だっただけに外に出さずに馬群に突っ込んだアンカツの好判断が光った。宝塚記念は6着に敗れたが、出遅れて最後方からメンバー最速の34.5秒で追い込んでのもの。使い込むと良くない馬で中2週の影響もあったのだろう。昨年の天皇賞(秋)は最後方から追い込んで2着。ローエングリンがハイペースで逃げる展開が見方した感もあるが、左回りの2000mがベストでとにかく終い切れる。今年も宝塚記念から直行で仕上がりが鍵。あとは展開の助けが少し欲しい。鞍上はテン乗りの蛯名騎手。

シルクフェイマスは昨年夏から今年2月の京都記念まで5連勝。日経新春杯でインパクトのあるレースをしたときにG1で通用するとみていたが、天皇賞(春)3着、宝塚記念2着に好走した。どちらも勝ち馬には完敗だったが、G1で通用する下地は存分に示した。今回は休み明けで馬体がふっくらしていないという話があるのが気になるが、そのあたりは最終調教で確認したい。芝2000mは[3-2-1-2]で連対率62.5%。東京コースは1走のみだが、02年の500万条件(芝1600m)で勝っている。勢いに乗ったマーベラスサンデー産駒。父は4着だったが、それ以上の結果を残せるか。

ナリタセンチュリーは京都大賞典でゼンノロブロイを差し切って初重賞制覇。別定57キロでゼンノロブロイと同斤量。相手が内をロスなく回って抜け出したところを大外から差し切るのだから強い。休み明け3戦3勝と鉄砲駆けするタイプだが、2戦目も2戦2勝で勝率100%。使い込むと脚捌きが硬くなるのでリフレッシュされた後に激走するタイプ。芝2000mは[2-3-1-2]で連対率62.5%。中京記念で後方からメンバー最速の34.4秒で追い込んで2着している。東京コースは初めてだが、父トニービン、母の父ノーザンテーストというのはテレグノシスと同じ。初の長距離輸送と田島裕騎手に東京実績がないのが少し不安だが、能力的に通用しそうだ。

あとは鞍上にアンカツを配してきたリンカーン、間隔を空けた方が走るバランスオブゲーム、中山記念を楽勝したサクラプレジデント、横山典騎手が騎乗してから徐々に抑えが利くようになってきたローエングリン、マーメイドSを楽勝したアドマイヤグルーヴなど人気になっておかしくない馬が多い。今年の皐月賞馬ダイワメジャー、桜花賞馬ダンスインザムードがどんな競馬をするのかも興味深いところだ。サイン馬券には興味はないが、アメリカ大統領選挙が近いことからリンカーンとサクラプレジデントの馬券はそれなりに売れるのだろう。

今週から芝コースは内ラチから3メートルのところに仮柵が設置されAコースからBコースに変更される。内側の荒れた部分がカバーされるが、先週までの傾向とそれほど大きくは変わらないだろう。まずは土曜の競馬をよくチェックしたい。週末は天気が崩れそうなので、雨が降ったときに果たして馬場がどうなるのか。安田記念は雨がかなり降ったが、馬場は稍重で勝ちタイムは1分32秒6と早かった。雨の量と馬場状態でレースは大きく変わりそうなので、今回も粘り強い予想が必要だろう。もう一回書くが今回のポイントのひとつが陣営の勝負度合い。パドックで自分の読みと陣営の思惑が一致しているかを検証した上で勝負したい。

2004/10/28
競馬アナリストGM

[Home]