宝塚記念
レース回顧

タップダンスシチーは好スタートからすぐに内に切れ込んで3番手。3コーナー手前で逃げたローエングリンを外から強引に交わして先頭に立つと最後までしぶとく粘ってレースを制した。直線入り口でシルクフェイマスが追ってきたが、最後は2馬身差をつける完勝劇。一頭だけ次元の違うレースで底力を証明した。良馬場だったが、雨で少し渋って時計のかかる状態だったことを考えると阪神のレースレコード2分11秒1というのは凄い時計。自信満々に乗った佐藤哲騎手の手綱捌きも光った。タップダンスシチーに騎乗したときは別人と言うが、他のレースでも考えられた騎乗が目に付く。個人的な話だが、今年のIPATの佐藤哲騎手の回収率は700%を超える。馬券に直結する今注目の騎手だ。タップダンスシチーはパドックでは馬体の張り、気配が素晴らしく、前走よりさらに調子を上げていた。今年7歳になったが、佐々木晶騎手が言うように老いて益々盛ん。ただそれも佐々木晶調教師の腕があってこそだろう。秋にはキングカメハメハとの対決を見てみたい気もするが、目指すは世界最高峰・凱旋門賞。タップダンスシチーの底力が世界でどこまで通用するのか楽しみだ。

シルクフェイマスは4番手を進み、3コーナー手前でタップダンスシチーが動くと一緒に上がって行ったが、直線で伸び切れずに2着に敗れた。直線に向いたときの手応えは良かったが、追い出すと苦しがって内に寄れた。それでも最後まで後続に抜かせなかったようにこの馬の底力も相当なもの。パドックではこれまで最も軽い470キロで腹が巻き上がって見えたし、テンションも高めだった。その状態で2着したのだから評価できる。02年の朝日杯CCはタップダンスシチーが勝ったが、そのときはマイナス14キロで馬体がギリギリに見えた。馬体は違うが、同じ阪神コースだけに通じるものがありそう。これからさらに強くなるのだろう。日経新春杯でインパクトのあるレースをして勝ったが、天皇賞(春)3着、宝塚記念2着とG1で結果を出した。インパクトのあるレースをした馬はG1で通用する。秋はキングカメハメハを相手にどこまでやれるのか注目したい。

リンカーンは後方から徐々に進出して直線で外から差してきたが、ゼンノロブロイを交わすのが精一杯で3着止まり。天皇賞(春)では芝丈が長かったが、阪神大賞典を勝ったときと同じような馬場で力を出し切った印象。現時点でこの距離ではこれが実力なのかもしれない。パドックではマイナス10キロで少し細く見せたが、馬に覇気があり気配は良かった。本質的にもう少し長い距離でスタミナが問われた方がいいタイプ。この夏の充電で馬体がどこまで成長してくるかが、今後G1を勝てるどうかの鍵になりそう。馬体が成長すれば坂路で時計が出るようになるだろう。4歳馬は弱いと侮ってはいけない。

ゼンノロブロイは好位を進み、3コーナーから仕掛けて進出して直線に向いたが、残り1Fでシルクフェイマスが内に寄れたことで前が詰まる致命的な不利。そこから外に出して追い上げたが4着に敗れた。メディア各社がこのことに全く触れていないのが不自然。まともに走れば2着と際どかっただろう。田中勝騎手が馬と馬の間を突いたが、あれだけ間が空いていれば突くのは当然。ただ激しいペースで前がバテ気味だったことを考えると外に出す手もあったか。ゼンノロブロイはパドックでは首を使ってリズム良く周回し気配は目立っていた。相馬眼的に高評価できる馬。秋にはさらに成長した姿を見せてくれるだろう。

ザッツザプレンティは中団から内を突いてしぶとく伸びて5着。早いペースで追走に手間取り、自分の競馬をさせてもらえなかった。行く気になれば行けないことはないが、行けば大敗を覚悟しなければいけないとデムーロ騎手が判断したのだろう。パドックでは前走から上向いたという感じはなかったが、この馬なりに調子は悪くなかった感。ただ昨年の菊花賞のときは馬体の張りが違うし、馬の精神面も違う。菊花賞当時のデキを取り戻し、もっと長い距離でしかも重馬場という条件が揃ったときに狙いたい。ただ2000mくらいでも重馬場でスタミナが問われるときは注意したい。

ツルマルボーイは最後方から追い込んだが6着止まり。ゲート入りを嫌がったことで係員に叱られて馬が怒ってしまったようだ。伸び上がるようにスタートして出遅れ。向こう正面で前とはかなり差のある最後方を進んだ時点でレースは決していた。パドックではボリューム感のある馬体で落ち着いて周回し、安田記念のときと遜色ない仕上がりだった。秋は最大パフォーマンスを発揮できる東京コースでまた豪脚を見せてくれるだろう。ただ安田記念は少しレベルが低かった可能性があるので、その点は少し注意したい。

サイレントディールは5番手からしぶとく粘って7着。前捌きが硬いので本質的にはダート向きだけに雨が馬場が渋ればもう少しやれたはず。パドックではフェブラリーS当日の方が馬体にボリュームがあり良かった印象。海外遠征明けで一気に仕上げた影響が少なからずあったか。馬体が戻れば巻き返してくるだろう。芝でもある程度はやれる。

スティルインラブは後方から差を詰めたが8着止まり。最後まで諦めずに走っていたが、今回はメンバーが強過ぎた印象。ただ昨年と比べて脚捌きに少し硬さがあるし、パドックでの気合乗りもひと息。その点でまだ変わり身はありそうだ。秋の目標はエリザベス女王杯。牝馬同士なら巻き返せるだろう。

ローエングリンはハイペースで逃げて後続を引き離したが、3コーナーで手前でタップダンスシチーに並びかけられると何も抵抗できずに10着に敗れた。横山典騎手が仕掛けて行かなかったのは、その時点で手応えに余裕がなかったのだろう。息を入れるところで並びかけられてはさすがに辛い。最近は徐々に底を見せてきた印象。G1勝ちにこだわるのなら、ダートというのもひとつの選択かもしれない。

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