菊花賞
レース回顧

ザッツザプレンティは中団を進み、3コーナー手前から外目を徐々に進出して4コーナーで先頭。直線では直後にネオユニヴァースが迫ったが最後まで確かな脚取りで後続を完封した。ダービーで長くいい脚を使える特徴を掴んでいたアンカツが自信のロングスパートで馬の持ち味を最大限に発揮させた印象。例年の菊花賞だとスローの切れ味勝負になるが、レースの上がりは35.8秒で例年以上にスタミナが問われたということを覚えておきたい。3冠がかかっていたネオユニヴァースを同じ社台RHの管理馬が阻止したということも評価したい。

ザッツザプレンティは、春は坂路調教の動きがひと息で力強さが不足していたが、今回はスムーズな脚捌きで春とは一変していた。パドックでは馬体の張り、毛づやが素晴らしく、馬も落ち着いて周回していた。いつもより馬体を大きく見せていたし、仕上がりの良さはかなり目立っていた。今回勝ったことで自分の勝ちパターンができたのは、今後に向けて大きい。最近の競馬は切れ味勝負になることが多いが、こういう馬の存在が競馬を面白くする。来年の天皇賞(春)ではぜひともヒシミラクルとの超ロングスパート対決を見せて欲しい。

ザッツザプレンティ同様、2着のリンカーンも坂路で動かないタイプだが、以前から言われているように長距離適性のある馬は坂路で動かない馬が多いということをあらためて実感した。動きが目立たないため軽視しがちだが、今後はそのあたりをケアしていきたい。またザッツザプレンティとリンカーンは神戸新聞杯の直線で不利を受けて目一杯に走っていなかった。昨年のマイルCSでも富士Sで前が詰まって直線追えなかったトウカイポイントが勝ったように不利を受けて力を出し切れなかった馬が次に巻き返すことが多いので注意したい。前走着順で人気が形成されるが、余力という点も考慮したいところ。

リンカーンは中団を進み、直線で外に出して追い出すと最後猛然と伸びて2着に突っ込んだ。あと50mあればザッツザプレンティを差し切りそうな勢いだっただけに惜しい内容。ただ4コーナーで最内から上手く外に出してきた横山典騎手の腕は光った。メジロライアン、セイウンスカイ、サクラローレルで淀の長距離戦を経験してきたように外国人騎手より一枚上だったとも言えなくもない。またリンカーンの長距離適性も見逃せない。馬体を見る限りまだ成長しそうだし、来年の天皇賞(春)ではかなり面白い存在になりそう。以前は全体的に硬さが目立ったが、だいぶ改善されてきたことも評価したい。

ネオユニヴァースは後方から徐々に進出して4コーナーでザッツザプレンティを射程圏に入れたが、直線でいつもの切れる脚がなく3着に敗れた。外枠で前半の位置取りが少し悪くなかったことが多少影響した感じもあるが、スムーズな競馬で大きな不利はなかった。ザッツザプレンティと一緒に上がっていきスタミナ勝負に勝とうとしたことが大きな敗因か。3コーナーから上がっていくときに蛯名騎手のヴィータローザにビッシリ競られたことで息が入らなかったことも少し影響した印象。

パドックでは馬体の張り、毛づや、気配とも素晴らしく、さすがに瀬戸口調教師と言いたくなるような仕上がり。集中力は凄いものがあるし、ザッツザプレンティとともにかなり目立っていた。3冠は達成できなかったが、今回のレース内容は十分評価できるもの。距離やペースなどあまり条件がつかないのもいいし、長距離戦でも乗り方ひとつでもっと際どい勝負ができるだろう。3冠から解放されただけに次走はもっと思い切ったレースができるはずだ。宝塚記念で4着したように古馬の一線級とも好勝負可能。

ゼンノロブロイは内々の好位を進んだが、3コーナーで外から一気に来られて行き場を失い後方に下がると最後は鋭く伸びてきたものの4着が精一杯。4コーナーで馬群を捌くのに苦労して手綱を引く大きな不利があったが、それでも4着に入ったように力のあるところは見せた。ただパドックでは前捌きに硬さがありスムーズさに欠けていたところを見ると前走より少し調子が落ちていた印象。周回するごとにゴツゴツとした感じは薄れてきたが、前走とは明らかに違っていた。

神戸新聞杯をデザーモ騎手が一杯に追って勝ち、2回連続の長距離輸送が微妙に影響したのかもしれない。あとは当初中4週で天皇賞(秋)に向かう予定だったため、神戸新聞杯を菊花賞のトライアルという位置づけで走らなかったということもあるように思える。G1は狙って獲るもの。ゼンノロブロイがG1級ということには異論はないが、そこまで甘くはなかったということだろう。ペリエ騎手は言わないが、3コーナー過ぎで行こうと思えば行けるタイミングがあっただけに強気にさせないものがあったとみている。ゼンノロブロイはまだキャリア7戦。今後も色々な可能性を持った馬であることは変わらない。

マッキーマックスは後方から徐々に進出して直線でネオユニヴァースの直後まで迫ったが、最後は一杯になって5着まで。やや強引な競馬だったが、藤田騎手が強気に攻めて現時点での力を出し切った印象。まだ少し前捌きが硬いところが気にはなるが、前走より馬体が絞れて調子を上げていた。左回りだと終いの切れが違うので大化けする可能性があるので、左回りのレースに出走してきたら注目したい。あと使い減りするタイプなので、調教で前捌きをよくチェックしたい。

サクラプレジデントは後方から直線で最内を突いて追い込んできたが9着止まり。向こう正面で内ラチに接触して武豊騎手のブーツがボロボロになったようだが、とにかく全く競馬にならなかった。直線では差を詰めてきたが、内にもたれてほとんど追えていない。プラス10キロでも馬体は重いという感じはなかったが、一体どうしたのか。2000mなら道中じっとしていられるが、長距離だと集中力が持たないのかもしれない。

馬体の作りや走法からは長距離向きとは言えないが、まともに走ってどれくらいなのかを見てみたかったというのが正直なところ。今後は普通に考えれば中距離路線を進みそうだが、小島太厩舎がどういう路線を選んでくるか注目したい。坂路で鍛えてもう少しストライドを伸ばせれば、東京コースでも十分やれることを付け加えておく。今回武豊騎手が騎乗して惨敗したが、ダービーで騎乗した田中勝騎手もどうしようなかったということを考慮したい。武豊騎手が騎乗したときだけ馬のせいというのはおかしな話。


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