秋華賞
レース展望(1)

3歳牝馬の最終決戦となる秋華賞。桜花賞とオークスを制したスティルインラブが3冠制覇なるか注目される。牡馬はセントライト、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアンの5頭の3冠馬がいるが、牝馬はメジロラモーヌただ一頭。桜花賞の1600mとオークスの2400mは全く違うレースであるということ、さらに桜花賞を勝つには完成度の高さが求められるが、そういうタイプの馬が秋までトップでいることが難しいことが3冠制覇の難しい理由だろう。果たしてスティルインラブは3冠制覇なるのだろうか。その可能性を探ってみたい。

秋華賞が新設される95年まではエリザベス女王杯として芝2400mで行われていた。1986年に3冠を達成したメジロラモーヌはエリザベス女王杯を制している。96年に秋華賞が新設されてから7年の間にメジロドーベル(オークス、秋華賞)、ファレノプシス(桜花賞、秋華賞)、テイエムオーシャン(桜花賞、秋華賞)の3頭の2冠馬が誕生している。メジロドーベルは桜花賞が不良馬場で追い込んでの2着、ファレノプシスとテイエムオーシャンはオークス3着だった。3頭に共通するのが秋華賞を制して2冠を達成したことと桜花賞で2着以内だったこと。

1600mの桜花賞を勝った馬にとって2400mのオークスとエリザベス女王杯の両方を勝つというのは至難の業だったが、2000mになった秋華賞は京都内回りコースで器用さとスピードが求められることで1600mをこなすスピードのある馬でも十分対応できるようになった。実際、オークスより桜花賞の成績が問われており、秋華賞で連対した14頭のうち桜花賞連対馬4頭、オークス連対馬2頭という内訳。2400mがベストではないスティルインラブにとって最大の難関はオークスではなかったか。過去の馬が示すように2000mの秋華賞という条件は合っている。

スティルインラブの馬体を見ると走る馬のそれを感じさせるが、スピードと瞬発力、抜群の競馬センスを持ち合わせており、全ての面で完成度が高い。最も特質したいのが精神面。G1の大観衆を前にしてもイレ込んだり、チャカついたりしない。ジワッと気合を乗せて他の馬には目もくれず集中して周回し、独特のオーラをかもし出している。皐月賞とダービーの2冠を制したネオユニヴァースのパドックでの集中力も凄いが、スティルインラブも負けていない。G1を連勝するには精神面の充実が不可欠と言ったら言い過ぎだろうか。

秋華賞は京都内回り2000m。コース的に前に行った方が有利なため、騎手心理が働いて乱ペースになると追い込みが決まる。内回りのためごちゃつきやすく、しかもフルゲートの18頭で紛れも多い。スティルインラブは器用な脚があるので出遅れがなければ好位につけられそう。好位で上手く立ち回って直線で抜け出すという正攻法の競馬がイメージできるが、怖いのは乱ペースになった場合だろう。

前に行かなくてもペースが早ければ差し切る脚はある。3冠のプレッシャーを背負う幸騎手の判断力が問われることになりそうだ。ただ幸騎手はスティルインラブで2冠を制してからこの夏完全にひと皮剥けた。やさしい顔つきは変わらないがやることは大胆だ。スティルインラブに寄せる絶対的な信頼。馬を信じて騎乗するだけと言い切るところに自信がみなぎっている。

幸騎手は「前走外枠で引っ掛ったので外枠は引きたくない」と話していたが、枠順は8枠17番に決まった。秋華賞では外枠の連対が多く、連対馬14頭のうち6枠より外の馬が9頭(6、7、8枠がそれぞれ3連対)。データ的には不利ではないが、器用な脚があるスティルインラブにとって内々をロスなく回るというのは大きなアドバンテージ。好スタートを切って好位につけてしまえばロスを最小限に食い止められるが、乱ペースになったときが怖い。このあたりをどう考えるかが予想のポイントだろう。

スティルインラブを管理する松元省調教師はトウカイテイオーで皐月賞、ダービーの2冠を制している。トウカイテイオーの父は3冠馬シンボリルドルフ。無敗の父子3冠馬の期待が高まったが、ダービーの後に骨折が判明し、その時点で3冠は夢と消えた。今回は牡馬ではなく牝馬で3冠に挑戦するところまできた。3冠を取れる器と言われたフジキセキで涙を呑んだ渡辺調教師とスタッフがジャングルポケットで01年のダービーを制したのが印象的だったが、今回は松元省調教師にチャンスが訪れている。

春からスティルインラブに坂路で50秒台の厳しい調教を課して鍛えてきたが、今回も1週前調教で50.0秒の1番時計を叩き出した。繊細な牝馬に強い調教を課せばそれだけ脚元のリスクは伴うが、それでも攻めの姿勢を崩さない。スティルインラブの強靭な肉体と精神面に信頼を置いているからこそなのだろう。その強い調教に応えるスティルインラブ、馬に絶対的な信頼を置いて騎乗する幸騎手。1986年のメジロラモーヌ以来、実に17年ぶりの牝馬3冠馬が誕生するのかどうか。その確率はかなり高いとみている。

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